そんなことはまったくない。しかしそれのどこが問題なのだろう? 今のアシでも十分だし、何より、ドライバーを楽しませてくれるエンターテイナーなのだから。映画、パルプ・フィクションのジュールスは「最後に勝つのは個性」といっていたことをふと思い出した。

また、イースト・アングリア周辺でまとめた488 GTBに関するメモも、賞賛に満ちたものだった。“ポルシェが仏頂面のところでさえ、488は喜びに満ちている” とカケット。“ステアリングだけでなく、すべての所作が軽やかで、グリップに頼りきるようなところもない。車体の向きの変わり方も至極なめらか” とも。

フランケルも同様に “特に今回のコンディションを考えると、驚くほかない”、“近年最高のステア・マナー、速さ、バランス”、“とてつもない制動力、ばかばかしくなるほど強大なトルク” とメモを残している。

実際にも、新式のターボ・エンジンの一切のラグのなさは際立った特長であるし、トルク・カーブが凡庸でないところにも驚かされる。マット・ソーンダースは “ステアリングとスロットルの反応は、これまでのフェラーリと一線を画している” とし、“とてもとても速く、エキサイティング” だと書いている。

488 GTBは、ノマドのオフロード性能とGT3 RSのサーキット性能のいいところ取りともいえる。バンパー・セッティングを ‘バンピー・ロード’ モードにすると、乗り心地はセダンさながらにいい。ステアリングも静やかで落ち着いたものとなる。

いった誰が、ロック・トゥ・ロック2回転のクルマだと思うだろう。そしてマクラーレンF1よりも34psパワフルなクルマだと思うだろう。

しかし、事実、そうなのだ。それに2、3速で、MX-5と同じくらい簡単にスネッタートン・サーキットのコーナーをドリフトしつづけることができる。フェラーリは欠点のないシャシーを作ることにようやく成功したのだ。