エミッション・スキャンダル、更に拡大
公開 : 2015.11.25 22:55 更新 : 2017.06.01 01:41
フォルクスワーゲンは、3.0ℓディーゼル・エンジンが、更に拡大の一途を見せているエミッション・スキャンダルに関連したとし、85,000台がその影響を受けるとコメントした。
これらのエンジンを搭載したモデルは、「補助エミッション・コントール装置」を搭載していると、アメリカ環境保護局(EPA)に指摘された。これは、モデル・イヤーで言えば2009年から2016年の3.0ℓディーゼル・モデルである。
フォルクスワーゲンのスポークスマンも、触媒が冷間時から温まるまでの間に、この補助エミッション・コントール装置が働くようになっていたとAUTOCARの質問に対して確認をしている。これは、コールド・スタート時に、エミッションを減らす効果を持つものだという。
スポークスマンによれば、このコールド・スタート時の一連のプロセスがテストの一部であるということを正しく申告していなかったため、それ自体が違法であるとされてしまったのだという。
EPAは今月初めに、フォルクスワーゲンが当初関与を否定していた3.0ℓV6エンジンについても不正があると主張した。EPAによれば、その3.0ℓV6ディーゼルが、法定限度値の最高9倍ものNOx値をマークしたという。
このエンジンは、フォルクスワーゲン・トゥアレグばかりでなく、ポルシェ・カイエン、アイディA7、A8、A8L、Q5にも搭載されている。
ロイターの取材に対して、アウディのスポークスマン、ブラッド・シュターツは、この補助エミッション・コントール装置のソフトウェアはヨーロッパでは合法的ではあるものの、それをきちんと監査機関に報告しなかったことも問題だという。
また、シュターツは、「現在、この補助エミッションコントール装置のソフトウェアを監査機関が許容できる範囲となるように再プログラミングしようと試みている。しかし、それには2桁の何百万ユーロ(18億円以上)のコストが掛かってしまうことになる。」と語った。
EPAの副管理官であるシンシア・ジャイルズは、「フォルクスワーゲンは、クリーンな排気を保つための法律に従うことができなかった。すべての自動車メーカーが同じ規則のもと、フェアにプレーしなければならないのに。EPAは、この深刻な問題の調査を継続して行うつもりだ。すべての自動車メーカーが、環境保護のため、そして消費者のために正しい数字を示さなければならない。」とした。
EPAのドキュメントによれば、「この3.0ℓV6ディーゼル・エンジンは、いつEPAの排出基準テストを受けているかを検知する電子制御モジュールのソフトウェアを搭載されていた。」と主張している。車輌がEPAのテストを受けていると察知すると、低いNOxとなるようなモードが設定されていたというのだ。このモードで動いていれば、EPAの排出基準をクリアすることになる。しかもテスト終了後、正確に1秒後にNOxを増加させるパラメータとなり、EPAの基準の最高9倍ものNOxを排出する「通常モード」になるとしている。更に、「EPAのテストの開始の時とは異なる他のテストではNOx値は最初から高い通常モードが適用されている。」とした。
英国でのエミッション・スキャンダルその後
英国では、このエミッション・スキャンダルで、フォルクスワーゲンの経営陣は最高10年の罪が課せられる可能性があると、運輸大臣、パトリック・マクローリンは語った。下院の運輸委員会の議長、ルイーズ・エルマン議員の問に対して大臣は、誤った情報を元にテストをパスしたというロード・ビークル・レギュレーション2009に違反したことで起訴できる可能があり、同時にフォルクスワーゲンが輸送部門(DfT)に違反したことにより莫大な罰金を課せられる可能性があると述べている。更に、不正取引規則2008に違反した罪でも、莫大な罰金と禁錮2年の懲役刑も課せられるともした。そして、詐欺法2006によっても最大10年の禁錮と罰金が下される可能性も示唆した。
マクロリーン大臣は、現時点では他のメーカーのモデルについては、そのようなテストをパスするプログラムが組み込まれていないことを確認している。また、フォルクスワーゲンが2016年中に正しいプログラムに修正することを望んでいるとしつつ、それが罰金刑を免れることに直接つながらないとしている。また、マクロリーンは、MOTエミッション・テストについても変更を加える可能性があるとも語っている。
英国市場向けのEA189の2.0ℓエンジンは、来年3月のロールアウトを前に、1月、2月とテストが行なわれ、承認される計画だ。また、1.2ℓのEA189は来年4月、5月にテストが行なわれ6月からの販売、1.6ℓのEA189は来年7月、8月、9月にテストが行われ10月からの販売が許される可能性が高い。
現在、フランスとドイツと共に新しいエミッション・テストについて協議が行われているという。
フォルクスワーゲン、買取価格を保証か
現在、フォルクスワーゲンではエミッション・スキャンダルの対象となった車輌に関して、もしユーザーが手放す場合、そのリセール・バリューを保証するということも考えているようだ。
新聞の取材に対してフォルクスワーゲンのスポークスマンは、「多くの人がクルマを手放すと考えなければならない。テスト数値に不正があったのだから、それは当然かも知れない。」とコメントしている。フォルクスワーゲンによれば、これまで発覚したEA189ユニットを搭載したモデルは、フォルクスワーゲン、アウディ、スコダ、セアトの4メーカーで合計430,000台。そしてそれは先週報道された800,000台というスキャンダルに関係したとさえるモデルの一部である。
このエミッション・スキャンダルに関与したとされるクルマのオーナーには、来週あたりからフォルクスワーゲンの公式通知が届くはずである。
ドイツではKBAがエミッションを再テスト
なお、ドイツでは自動車産業監視機関(KBA)によって、23の異なるモデルで再度エミッション・テストが行われている。これは、もちろんフォルクスワーゲンのスキャンダルを受けてのことだが、更なる不正が行なわれていないかをチェックする役目がある。現在、その2/3のテストを終了している。
このKBAのテストはすべてディーゼル・エンジン搭載車で、アルファ・ロメオ・ジュリエッタ、アウディA6、アウディA3、BMW 3シリーズ、BMW 5シリーズ、シボレー・クルーズ、ダチアSD、フィアット・パンダ、フィアット・デュカーロ、フォード・フォーカス、フォードC-マックス、ホンダHR-V、ヒュンダイiX35、ヒュンダイi20、レンジローバー・イヴォーク、ジープ・チェロキー、マツダ6、メルセデス・ベンツCクラス、メルセデス・ベンツCLS、メルセデス・ベンツ・スプリンター、メルセデス・ベンツVクラス、ミニ・クーパー、三菱ASX、日産ナヴァラ、プジョー308、ポルシェ・マカン、ルノー・カジャール、スマート・フォーツー、トヨタ・オーリス、ヴォグゾール・アストラ、ヴォグゾール・インシグニア、ヴォグゾール・ザフィーラ、ボルボV60、VWゴルフ、VWビートル、VWパサート、VWトゥーラン、VWトゥアレグ、VWゴルフ・スポーツバン、VWポロ、VWクラフター、VWアマロックがテストを受ける予定のモデルだ。