セアト・イビーザ1.0 75PS SE
公開 : 2015.12.01 23:40 更新 : 2017.05.29 18:43
■どんな感じ?
これまでのイビーザは、安価なトリム・レベルでも小さい方の出力でも運転して楽しいものだった。これはフェイスリフトしたモデル変わらない。
低速域でもステアリングは軽く、正確でクイックだ。操りやすさを感じないため、市街地でも運転に苦痛を感じることはない。
ただ、改善が加えられたにもかかわらず、速度を増したり、タイトなコーナーに差しかかった際に期待するほどの重みはなく、少しばかり漠然とした感覚をともなう。
またタイヤを強く押しつけるような攻め方をした際のステアリングの重みや感覚にもあまり変化が見られない。したがってフォード・フィエスタとまではいかない。
しかしながら、必要以上に軽すぎるということはないため、コーナーでも不安になることはなく、車体はぴたりと安定している。かなりの速度でもグリップは必要にして十分であり、元気よく走ることも可能だ。すばしっこさは1043kgの乾燥重量によるところも大きい。
ストラクチャーの剛性も常に高い。バンプを踏みこえても嫌な振動は皆無であり、ハードに走らせても軋み音はまるで聞こえない。おかげでサスペンションは極めてプロパーな仕事をする。硬質さはあるのだが不快ではなく常に安定している。高速道路、峠道を問わず、楽しい理由である。
自然吸気3気筒の小さなエンジンであるにもかかわらず、動作が生き生きとしているのもイビーザの特長だ。どのギアを通してもエンジンは軽やかに回るのである。6700rpmを過ぎたあたりに訪れるレヴ・リミット付近では、愛着のもてるサウンドが響く一方で、通常の使用域にあたるミドル・レンジは静か。振動もない。
静止状態から100km/hに至るまでは14.3秒かかるのだが遅さにイライラするほどではない。スロットル・レスポンスには切れ味がありトラクションも問題はなし。クラッチやブレーキ・ペダルのアクションも違和感ない。
当然ながらターボ加給が施されるエンジンや排気量が大きいエンジンに比べるとミドル・レンジの力づよさは劣ってしまうが、適切なギアを選べばフラストレーションも感じない。ギア比も市街地の走行を見据えている。
時に変速の際、5速MTからリンケージ周辺から奇妙な金属音や振動が伝わる。その他の設計に隙がないクルマであるだけに、ソリッドな印象を損ねている。
セアトの標榜する燃料消費率は19.2km/ℓ。この数値ならば、一度の給油で853km航続できることになる。本テストでは12.7km/ℓをマークした。田舎道をかなり飛ばしたため悪い数字ではなかろう。それでも航続距離は563km。小型ハッチとしては優秀である。