アウディR8 vs マクラーレン570S vs 911ターボS vs アストンV12 S

公開 : 2015.12.12 23:50  更新 : 2017.05.29 19:30

そのなかでも唯一救ってくれたのはインディビジュアル・モードだった。

これだとステアリングの仕立てにも納得できる。システムにも人間味がでてくる。それぞれの機関を個別に設定できるため、一般道に合わせてサスペンションをやわらかくする。パワートレインはスポーティな設定のままにしておく。

するとハンドリングがキビキビとしすぎないことに気がつく。ステア・フィールも速度依存しにくく、手に伝わる感触も密だ。乗り心地は硬いが、許容できる。

驚かされるのはパワートレインの多彩さだ。ミドル・レンジのバランスは扱いやすさに直結しているし、高回転域はドラマティック。4WDシステムとトランスミッションの相性には目を見張るうえ、機械側の適切なギアの選び方も他と比べ物にならないくらい見事だ。エンジンのたおやかな回転も気持ちがいい。

しかしそれでもハンドリングは完全無欠とはいえない。たくさんのハードウェアをシェアするランボルギーニウラカンよりスムーズなのだが、アストンよりはるかに楽しいというわけではない。するりとコーナーに入ったあとの調整のしやすさや生き生きとしたキャラクターは印象的だが、横方向の動きに抗おうとするスプリングは先代ほど懐が深いとはいえない。

すこしだけ漠然とし、先の動きを予想しづらいステアリングは精緻な印象の足を引っ張っているし、パワーの与え方で方向を変えたい際に、4WDシステムが望む動作とのあいだにラグをもたらしている。もう少しリア・アクスルにパワーを送りたいのに……と思うことが時々ある。

太陽が沈み、撮影が終わった。北のランダバリーに向けて64kmを走らせた。R8を降りて感じた。数年前に向き合ったセンセーショナルなアウディは影も形もなくなっていた。

たしかに速い。しかし、少なくともV10プラスは、しなやかではないし、盤石の構えであるわけでもない。それにコミュニケーティブでも自信を誘発する類でもないと感じた。サーキット上での実力は認めるが、かつての輝きは失われていた。

水曜日 7.19am : ホテルの駐車場

朝6時から、この地でもっとも上手だといわれる洗車スタンドを往復した。どのクルマもきらきらと光っている。路面は濡れているが、思わず目を閉じてしまいそうなくらいの日差しはやはり気持ちがいい。

ちなみに4台すべてが1ヶ所に集まったのは今日が初めて。正直なところほっとしている。昨日までの天気だと、このうち数台がクラッシュしても、なんら不思議ではなかったからだ。

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