text & photo:Tetsu Tokunaga (徳永徹)
上の写真は、中国地方で開催された某自動車メーカー・ファンイベントのワンシーンである。仕切り役の男性が「Be a driver.ポーズで」と伝えると、これだけの人数が一斉に同じ格好をした。数えてみると、手がふさがっている人や子どもを除いて、実に97%の人間が共通の動作をしている。アイーーンやスペシウム光線のお株を奪う新たなポージングは、いかにして市民権を得たのであろう。
走行というのは連続的な運動である。そこに胸のすくような味わいを与えたマツダ車は、乗る者に連続性のある歓びを提供する。
自動車が趣味という人間には、スタイリングを気に入りクルマを停めて眺めるタイプや、機械的な特性を感じさせる一瞬を噛みしめるタイプがいる。しかし、それとは異なり、走りが魅力のこのメーカーのクルマは、走行しているあいだずっと乗り手を身もだえさせ、ステアリング操作の病みつきにさせる。CMでも、Be a driver.という文句とともに、笑顔でハンドルを切る女性が大写し(図1)になっていた。結果的に、マツダファンの集合写真は、このような姿になるのだ。
年の瀬に開催されるマツダ・ファンフェスタにもそれがよく表れていて、マツダ車のパレードや展示企画よりも、オーナー参加のサーキットトライアルや耐久レースのマツ耐、コスモスポーツの走行会などの走り物が多い。
そういうわけで、レポートする側の人間はコース脇に陣取ることになる。ベテラン・カメラマンさんからのアドバイスは、ホッブスコーナーでの撮影だ。岡山国際の最高点へと駆け上がる右コーナーは、カメラエリアがコースに近く、コーナー出口で構えると自分の方にクルマが迫ってきて写真映えする。しかし、その場所には大きな問題点が潜んでいた。
ファインダーのなかに捉えたコーナリング中のNDロードスター。ピントがあったその瞬間、ドライバーの姿はまさにあのポーズなのだ。Be a driver。続いてNAロードスターがコーナーを立ち上がる。運転席は当然Be a driver。さらにデミオも続く。Be a driver。アクセラも、8も、もちろんみんなBe a driver。シャッターを切っても切っても、金太郎あめのごとく、同じ姿のドライバーがカメラに飛び込んでくる。Be a driver、Be a driver、Be a driver……。
夕方。約1200枚の写真をそこで収めたわたしは、コースサイドで放心していた。そして、熱病にうなされるようにこうつぶやいたのだった。「あい・わな・びー・あ・どらいばー」ここにまた一人、毒にやられた男が生まれたことになる。
サーキットを離れる前に一つだけ確認したいことがあった。コース内にスズキ・アルトが1台いて目を疑った。きっとあれは、マツダ・キャロルなのだろうが、なぜOEMモデルでこのイベントにエントリーしたのか。
取材に応じたオーナー氏はこう答えてくれた。「アルトを買いにスズキのディーラーを訪れ、買おうとしたところでOEMがマツダにあることを思い出したんです。だって、それ買えばこれに出れるわけでしょ」 Be a driver症候群は増殖中である。
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図1:本家Be a diriver.の図。(写真提供:マツダ株式会社)
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経費削減に苦しむAUTOCAR編集部を救った無料のおしるこ。マツダ・ファンフェスタでは塩昆布を投入する。
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あんこが苦手なわたしでも塩昆布のおかげで仲間と認めてもらえた。さて、取材開始。
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NDはNCよりFバンパーが1.5kg軽い。比較するとNDの方が全体的に薄く、場所によっては極薄。
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エンジンブロックの砂型に触る。私「これでタイ焼きみたいにどんどん作るんですね」技術員「タイ焼きより速いです(1分に1基)」
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京商のブースでは、子どもたちがスロットカー・レースにかじりつく。アクセルワークをこうして理解する。
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45年前のクルマとは思えないコスモスポーツが並ぶ。オーナーズクラブは欠品パーツの製作も行う。
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昭和46年式のL10B。12台エントリーしたコスモスポーツのなかでシルバーはこの1台だけ。
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ローリング・アテンザの図。全体的にマツダファンは、前車の走行ラインをトレースするのがうまい。
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虹のようにデミオが弧を描く。紫は特別仕様車のアーバン・スタイリッシュ・モードだ。
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コース内では一転して闘志をぶつけ合う。メインストレートでDE系をかわす現行DJデミオ。
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全日本ラリーJN3クラスとS耐ST5クラスのデミオが混走した。連続写真のように連なる好プレー。
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朝霧に覆われる岡山国際サーキット。紅葉が映りこむのはディーゼルのデミオ群。
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少し目を離した隙に、虹はすっかり姿を変えていた。AZ-1と、奥はアテンザ。
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近づけないはずの虹に近づく。今回は不在だが、オーナーズクラブはAZ-1だけでなくCARAも入会できる。
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アテンザ乗りの皆さん。車高はオーナーそれぞれ好みがあるようだ。
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パドックにレーシング・サウンドが轟く。JSPC仕様の787B、003号車のピットは初詣のような混雑。
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真打登場。ル・マン仕様とはオレンジとグリーンの配色が逆転する。
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ドライバーは寺田陽次郎。JSPCでは岡山開催がなかったから、このシーンはイベントならでは。
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混走するのは、ミズノ・スポーツ88S。88年からGCに参戦した車両。エンジンは3ローター。
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2台ともにバックファイアを噴き上げ周回を重ねる。カメラを投げ捨て観戦に集中したかった。
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ピットには、もう一台の目玉車両が。グランツーリスモ6向け、マツダLM55ビジョン・グランツーリスモ。
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こうして並ぶと、2台のスタイリングに関連性を見つけることができる。
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LM55ビジョン・グランツーリスモは、今回のファンフェスタが日本初公開の場。
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デモラン後のメンテナンスも公開してくれた。ホイールはピットイン後に交換されている。
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走行時のフロント・タイヤは、こちらのエアロディッシュ・タイプのホイール。
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LM55もDUNLOPを履くが、こちらは335/685ZR19サイズのコンセンプトタイヤ。
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メインストレートを埋め尽くすロードスターズ・ミーティングの皆さん。
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若者がオープン2シーターに乗ると、もう非常に爽やかなのであります。
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アストン顔のキットを販売してきたBARCHETTAは、今年12月で製品販売を終了してしまう。
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ロードスター乗りの走行会で必ず目にするこの光景。
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出走すると、これまた見事に5台が連なり、Be a driverポーズで走り抜ける。
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それをアウトからカモる現行GJアテンザ。マツ耐上位20台のなかで4ドアはこの1台だけ。
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おっとっと。次の周回、グリーンのDEデミオは3輪走行で同じコーナーを攻略する。
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ディーゼルのデミオでBe a diriver.
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アルトならぬ、マツダ・キャロルでBe a diriver.
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TUNEDクラスではMPVだってBe a diriver.
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アクセラだってロードスターを従えBe a diriver.
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レッカーのお兄さんもBe a diriver.
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Be a diriver、Be a diriver、Be a diriver……
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オールマツダパレードランとともにファンフェスタは日没を迎える。
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「来年は首都圏でも」と声が上がっていた。東日本での開催が待ち遠しい。