本体価格自体はRC F(標準モデルで954万円)より明確に高い。ただし、TVD、レーダー式クルーズコントロール、車線維持アシスト、アダプティブ・ハイビーム(RC Fは単純なオートマチック・ハイビーム)など、RC Fでオプション扱い装備のいくつかが、GS Fでは標準となることは留意すべきだろう。RC Fにこれらをすべて装備すると総計で1,000万円超えとなる。

■どんな感じ?

いまどき希少なハイチューン自然吸気V8は、今回から1基ずつの回転バランス取りも実施されている。絶対的にはドイツ系の競合他車ほどパワフルでもトルキーでもないが、回転上昇にともなってトルクを積み上げていくリニアリティ、5000rpmを超えてからの雑味のない回転フィール、そして高域での“泣き”のサウンド……は、お世辞ぬきで快感。少なくともセダンに搭載されるV8としては、世界屈指の官能性といっていい。

専用チューンの8ATも、IS Fでの初登場時は文句なしのスポーツ変速機だったものの、今となっては「変速ショックが出てもいいから、もっと速く!」とせっつきたくなることもなくはない。まあ、山坂道では十二分に小気味いいが、レクサスみずから主舞台とするサーキットでは物足りない面もある。

シャシーの味わいは、RC Fよりロングホイールベースというスペック(トレッドは共通、車重差は意外に小さく40㎏ほど)から想像されるとおりだ。RC Fより明らかに落ち着いた身のこなしで、乗り心地も確実に快適。RC Fではちょっと過敏に思えたステアリングも、GS Fではなんとも良い塩梅(あんばい)にマイルドになった。ドア枚数だけでなく、乗り味においても、1台ですべてをこなすオールラウンド性はGS Fのほうが上だろう。