スマート・フォーフォー

公開 : 2015.12.16 23:50  更新 : 2021.10.11 08:58

その一方で、フロントが軽くリアが重いリア・エンジン車は、一般論として高速直進性がFWD車より劣るとされる。けれども、この日の経験からいうと、日本の高速道路で日常的に使うスピードの範囲では、直進性に不安を感じることはなかったといえる。とはいえ横風にはあまり強くない印象で、風のある海岸道路でトラックを追い越した直後などに、若干ステアリングを修正する必要を感じることはあった。

リア・エンジン車はハンドリングも癖の強いものになりがちなイメージがあるが、フォーフォーはターンパイクのワインディングを、危なげのないフットワークで走り抜けて見せた。着座位置が高いこともあって下りでペースを上げると少し緊張感があるが、軽めのステアリングを操ってのコーナリングはアンダーステアが軽いのが印象的で、狙ったラインを素直にトレースしていく。さらにディスク/ドラムのブレーキも、頼れる効きを発揮してくれた。

それに加えて、これまでのスマートではゴツゴツした感触のあった乗り心地が大幅に改善されて、意外なほどソフトで快適なことも印象に残った。ボディ剛性もまったく充分な印象である。

だが、ひとつ気になったのが動力性能、なかでも特に発進直後の加速が少々トロいことだった。スピードが乗ってしまえばそういう印象は消えて、高速でも望むスピードでクルージングできるのだが、発進直後の蹴り出しがいささか迫力に欠けるのだ。エンジンのスペックからすると決して高回転トルク型ではないのだが、ちょっと意外な傾向である。

記事に関わった人々

  • 吉田 匠

    Takumi Yoshida

    1947年生まれ。1971年、青学大卒業と同時に「CAR GRAPHIC」編集部に。スポーツカーの試乗記などを手掛け、FJ1600などのレースにも参戦、優勝経験数回。1985年、同社を退社、フリーランスのモータージャーナリストになる。「ポルシェ911全仕事」等、単行本多数。旧いスポーツカーに目がなく、愛車はポルシェ356B、ロータス・エランS2、他。

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