ロータス・エヴォーラ400

公開 : 2015.12.17 23:50  更新 : 2021.10.11 08:58

6段ATはドライブ・モードだと比較的早めに自動シフトアップする印象だが、スポーツ・モードやレース・モードを選ぶとパドル操作によるマニュアル・モードに変わる。したがって、箱根のワインディング・ロードでは常にスポーツ・モード以上で走っていたが、そうすればスロットルとパドルの操作だけで、常に充分なパフォーマンスが手に入った。

いかにもロータスらしいのが、スタビリティよりもアジリティを優先したかのようなハンドリングで、前記のようなナチュラルな感触のステアリングとスロットルの連係プレーでワインディングに挑むと、エヴォーラ400はボディ・サイズからイメージするより身軽にコーナーに飛び込んでいく。クルマが積極的に曲がりたがっている印象を与えるのだ。

というわけで、AT仕様でも充分ワインディング・ロードを愉しめることが分かったところでMTに乗り換えたら、またひとつ世界が変わった。まずMTはATより車重が30㎏軽いが、その数字の差以上にMT仕様は身のこなしが軽く感じられる。さらに、トランスミッションのギア比の違いもあって、コーナーからの脱出加速もATより一段と鋭い。

大きなアルミのノブを握って操るギア・シフトは、まだ新車のためか動きが少々固かったが、ストロークは短く、作動は確実なものである。エリーゼやエキシージの経験者なら、リモコンのリンクの感触を手の平に伝えてくるのが、ロータスらしいと思うだろう。

曲がりたがりのハンドリングはもちろんMTも同様で、特にスロットルを閉じつつタイト・コーナーにターンインしていくと、ノーズが内側に入るだけでなく、テールも外に出たがるかのような素振りを見せる。実際にテールスライドしたわけではないが、そういう気配を感じさせるのだ。

だから、短時間の試乗ではそこまで習得できなかったが、ワインディングやサーキットを走り慣れれば、テールアウト気味の脱出を決めることも可能になるのではないかと思う。AT仕様でも同じ印象はあったが、MT仕様はLSDを標準装備しているので、そういうドライビングに一段と向いているかもしれない。

エヴォーラの4輪ダブルウィッシュボーン・サスペンションはダンピングの切り替えを持たず、モードは常に一定だが、新採用のミシュラン・パイロット・スーパースポーツとの相性を含めた乗り心地とハンドリングのバランスは絶妙で、モード切り替えは不要に思えた。

一方、ロータスというとこれまでブレーキの制動力に物足りなさを感じるクルマもあったが、APレーシング製の4ポッド・キャリパーと大径ローターを備えるエヴォーラ400の場合、絶対的なブレーキング・パワーもまったく充分なものに感じられた。

記事に関わった人々

  • 吉田 匠

    Takumi Yoshida

    1947年生まれ。1971年、青学大卒業と同時に「CAR GRAPHIC」編集部に。スポーツカーの試乗記などを手掛け、FJ1600などのレースにも参戦、優勝経験数回。1985年、同社を退社、フリーランスのモータージャーナリストになる。「ポルシェ911全仕事」等、単行本多数。旧いスポーツカーに目がなく、愛車はポルシェ356B、ロータス・エランS2、他。

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