ポルシェ911カレラ / 911タルガ4 GTS

公開 : 2016.01.05 23:40  更新 : 2021.10.11 09:10

搭載エンジンのスペックのみを比較すると、911カレラと911タルガ4GTSの差は非常に大きなものに感じられるが、ウエイトでは911カレラの方が約200kgも有利、すなわち軽量だ。駆動方式も911カレラはRWD、一方の911タルガ4GTSは4WDであるから、走りのキャラクターには明確な違いがあることも容易に想像できる。はたしてこの両車は、どのような走りを披露したのだろうか。さっそくそのレポートを始めよう。

■どんな感じ?

伝統の911シリーズに限らず、ポルシェのプロダクトのすべてに共通する最大の魅力は、ドライバーがクルマの動きを常にダイレクトに感じられるということだろう。タイヤからサスペンションに、そしてボディへと伝わるインフォメーションは、それがよりシンプルな姿であればあるほど正確にドライバーへと伝わる。最もベーシックな仕様が最も魅力的な存在に思えるのは、優秀な工業製品の特長だが、その象徴的な存在といえるのが、自動車の世界においてはポルシェ911なのではないかとも思う。

911カレラの7速MT仕様は、その事実を改めて感じさせてくれたモデルだった。ペダル・レイアウトは、右ハンドル仕様ではあったものの自然な配置で、剛性感のあるシフト・フィールが、積極的にシフトしようという意思をドライバーに生み出させる。日本のワインディング・ロードでは、2速、あるいは3速を多用することになるだろう。リアの水平対向6気筒エンジンは、自然吸気エンジンらしく実にナチュラルでスムーズな動きに終始する。自分自身の意思のみでシフト・アップ&ダウンが行われる7速MT仕様であるから、高速域でのレスポンスやパワー・フィールの素晴らしさも、十分にそれを味わうことができた。

コーナリングの楽しさもまた圧巻だ。特に印象的だったのは、ステアリングを切り込んだ瞬間から感じられる自然なターンイン。アクセルとブレーキの操作でコーナリング時の動きをコントロールできる楽しさは、個人的にはミドシップのケイマン&ボクスターよりも大きいと思えた。

ワインディングを離れ、ハイウエイでの高速クルーズにシチュエーションを移すと、911カレラはまた別の魅力を披露する。その走りは常に快適で、特にしなやかな乗り心地を生み出すサスペンションのチューニングには感動させられた。これならば長距離のクルージングが負担に思えることもないだろう。ドライバーとパッセンジャーには快適な移動空間が与えられているし、さらにリア・シートも備えられるのだから、その実用性は相当に魅力的だ。

記事に関わった人々

  • 山崎元裕

    Motohiro Yamazaki

    1963年生まれ。青山学院大学卒。自動車雑誌編集部を経て、モータージャーナリストとして独立。「スーパーカー大王」の異名を持つ。フツーのモータージャーナリストとして試乗記事を多く自動車雑誌、自動車ウェブ媒体に寄稿する。特にスーパーカーに関する記事は得意。

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