アウディh-トロン・クワトロ・コンセプトを発表

公開 : 2016.01.12 22:30  更新 : 2017.12.14 12:31

アウディは、h-トロン・クワトロをデトロイト・モーターショーで公開し、新たな動力を採用したコンセプトカーの開発に弾みをつけるようだ。

この新型コンセプトは、水素燃料フューエル・セルを採用する生産化前提のSUVで、主にe-トロン・クワトロ・コンセプトのプラットフォーム、エレクトリック・ドライブトレイン、バッテリー関連の技術を採用している。

ゼロエミッションへの親和性にも優れ、最新式の水素供給システムを利用すればたった4分で水素を充電し終えることができ、その航続可能距離は600kmに達する。また、この4輪駆動コンセプトは、0-100km/h加速を7.0秒未満で走りきる一方、最高速度は200kmに制限された。なお、都市部での一般的な走行時には、前輪駆動となる仕組みだ。

h-トロン・クワトロには、ドイツのインゴルシュタットにあるアウディのエンジニアリング本部が開発した第5世代フューエル・セル・スタックが採用され、2020年にはh-トロン・クワトロを生産化する予定としている。

燃料セルは、3つのカーボンファイバー強化プラスティック・タンクで構成され、700barの圧力で水素を充填できる。トルクチューブのトンネル内に1つ、後席の下部とトランクをまたぐように小型のものが1つずつ用意される。スタックには330のセルが並び、110kW(150ps)を発揮する能力がある。

想定稼働温度は、最高95℃まで上昇し、われわれが2014年にテストしたアウディA7 h-トロン(第4世代のスタックを使用)に比べ15℃高くなっている。この最新式スタックは、一般的にはエンジンがおさまるエリアに搭載され、-28℃でも作動するという。

軽くなり、小型で強固になったうえ、環境性能も高めたユニットは、効率性の評価で60%も優れた結果を出し、一般的なエンジンの2倍に当たる性能を実現した。

アウディによると、生産モデルではプラチナの使用量を少なくできることも大きなポイントで、価格も抑えることができるうえ、環境に配慮したモデルになった。また、新型のヒートポンプは、熱に関する課題が多かった初期型のフューエル・セル・プロトタイプにくらべ熱効率を高めるものになっている。

容量1.8kWhのやや小ぶりなリチウムイオン・バッテリーは、乗員エリアのフロア内部にマウントされ、これにより100kW(136ps)の追加出力を一時的に得ることができる。重量を60kgに抑えたこのバッテリーにより、h-トロン・クワトロの航続可能距離は600kmを実現した。

V220からV280の電圧で稼働するフューエル・セルにたいして、バッテリーはV220からV480の電圧を発生する。このため、エンジン・コンパートメントに搭載したDCコンバーターが電圧差を調整し、フロントアクスル内のモーター(122.7ps)、リアアクスル上のモーター(190ps)という2つのモーターにエネルギーを与える。いずれのモーターも、ディファレンシャルギアとして機能する無段変速プラネタリー・ギアセットを装備している。

このギアセットは、3つのモーターと、大型のリチウムイオン・バッテリーを搭載していたe-トロン・クワトロのものとは異なる形式を採用した。

こうした装備により、h-トロン・クワトロのシステム総合最高出力は、286ps、56.1kg-mとなっている。なお、空力性能に特化し、重量がかさんでしまったe-トロン・クワトロは、502ps、60.1kg−mという値だった。

アウディの発表によれば、この4シーター・コンセプトは、0-100km/h加速に7秒かからず、最高速度は200km/hとなる。参考までにe-トロン・クワトロは、それぞれ4.6秒、201km/hという走行性能を発揮した。

スロットル操作にともなうエネルギーの回生については、ドライバーが2種類を選択可能。

プラットフォームは、近々発表される第2世代のQ5にも使われるMLBプラットフォームの改良型を採用。これは、重心近くにバッテリーを搭載する目的でフロアパンおよびフロアの構成部品にリワークを施したものだ。

足回りは前後ともに5リンク・サスペンションで、アダプティブ・ダンパーとセルフレベリング機能を備えるエア・スプリングを採用した。これにより、高速道路などではエアロダイナミクスを改善するために、最大30mmの範囲で車高を2段階に変更できる。

また、新型のQ7の技術を取り入れ、h-トロン・クワトロにも4輪操舵機能が備わっている。これは、街中での取り回しを考慮して、最小回転半径を小さくするために、後輪を最大で5°操舵するものだ。

全長は4880mm、全幅は1930mm、全高は1540mm。CD値に関しては既存のアウディのラインアップより勝る0.27を実現したこのモデルだが、e-トロンの0.25にはかなわなかった。これは、フロントに搭載するフューエル・セル用の冷却システムが追加されたことによる結果だ。

インテリアは、昨年のLAショーで公開されたプロローグ・コンセプトから影響を受けており、乗員4人の車内には、フロントとリアにそれぞれ独立したシートを用意する。

車内のハイライトは、3つのOLEDディスプレイで、2017年に発表される4代目A8に搭載予定のものだ。トランクは水素用タンクにスペースを取られ、e-トロン・クワトロより少ない500ℓとなっている。

自動運転については、いわゆるパイロット・ドライビング・リサーチ・プログラムの一部として開発した様々なテクノロジーを搭載しているように見える。レーダー・センサーおよびレーザー・スキャナー、ステレオ・カメラ、超音波センサーがそれを物語っている。

▶ 2016 デトロイト・モーターショー

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