ポルシェ911ターボS
公開 : 2016.01.21 23:50 更新 : 2017.05.29 19:04
■どんな感じ?
911ターボが代替わりするたびに相応のステップアップをしてきたことに、われわれは少しずつ慣れはじめていた。しかし今回は違う。新型ターボSはこれまでとは次元が違うステップアップをしたのだった。
公表値こそ0-100km/hタイムは2.9秒となっているが、プロダクト・ディレクターのオーガスト・アクライトナーにいわせてみれば「計測中に2.6秒を記録することも少なくなかったんです」とのこと。
80km/h→120km/hはわずか1.8秒。静止→160km/hまでは6.8秒。公道を走れるスーパーカーをも超えたことになる。アクライトナーいわく「918スパイダーでさえ簡単なことではないですよ」だそうだ。
エンジンと4WDシステムを締めあげたのは、直線における加速を速めただけでなく、チャレンジングな峠道やサーキットにおけるダイナミクス向上まで考えたゆえである。
筆者もまた、加速だけでなくコーナリング時にもターボSの進化を体感したひとり。コーナーの抜けだしには、これでもかというグリップを見せつけられた。コントロールも殊のほかしやすいものだった。
モデル・チェンジのタイミングで ‘たのしさ’ まで考慮しているのはサーキットを走らせることでよくわかった。コーナーではサクッと鼻先が向きを変える。それでいて、自分の意図とまるで誤差がない。
4WDシステムは、これまであり得ないような柔軟さでパワーを配分する。なのにこちらが怖気づいてしまうほどニュートラル。その時の速度もとんでもない。これをマジカルといわずに、どういえばいいのだろう。
基本的にコーナーは予想よりもはるかに早いタイミングで近づいてくる。勇気を振りしぼって飛ぶこむと、ナーバスさを一切見せずに、わずかなアンダーステアとともにツルリとコーナリングが終わる。
そこからはピレリPゼロが、路面に杭を打っているのではないかと思わせるほどにガッツリと食いつく。リアはスロットルの入力にあくまで従順。後輪駆動のように、ある種の自信を掻きたててくれながら前に突きすすむ。