新型日産リーフ 第2回

公開 : 2016.02.25 21:50  更新 : 2022.07.22 07:24

text & photo:小林 薫 (Kaoru Kobayashi)

 
発表と同時に発注した新型リーフが、1月15日に納入されました。それから約1ヶ月、日常生活の中で使用し、とても完成度の高いEVになっているのを実感することができました。特に、バッテリー容量の増加などによる航続距離の改善は、驚くほどの効果です。初期型リーフでは、いつも残量を気にしていましたが、それがなくなり、安心感が格段に向上しました。また、それ以外の不満点もほぼ解消され、期待通りのクルマになっています。今後、バッテリーなどの改良がさらに進み、EVライフも飛躍的に変わっていきそうです。

納車後、乗ってすぐに感じたのは、バッテリー残量の%表示の安心感でした。約4年間乗った初期型は12段階の表示だけ。残量が少なくなってくると、不安感が出ていました。また、アクセルを踏み込んだ時の加速感が、滑らかになっていました。今までの方がEVらしかったので、その評価は、乗る人によって変わりそうです。

冬なので、暖房を入れました。すると、あまり間がなく熱風が出てきたのには、ちょっと驚きました。前回のマイナーチェンジから、ヒートポンプ方式になっており、大きな違いです。これまでは、スイッチを入れてから5〜6分経たないと熱風が出てきませんでしたが、新型では1〜2分です。しかも、風の温度が高く、すぐに暖かくなりました。おかげで、欠かせなかった膝掛けが、ほとんど不要になりました。外気温はちょうど0度でしたが、この程度の気温では問題ないようです。さらに、電気の使用効率もかなり良さそうです。スイッチを入れてしばらくは、消費電力が多い感じでしたが、すぐに少なくなりました。
また、交差点で止まる時、Bモードによる回生ブレーキを使えたのは、とても快適でした。エンジンブレーキと同じで、フットブレーキは最後に使うだけで済みます。

充電回数も改善されました。冬は電費が悪いので、日常余裕ある残量を維持しようとすると、どうしても1〜2日間隔での充電が必要でした。それがほぼ5日程度に減りました。ケーブルを出したり片付けたりするのは手間なので、これだけでも、利便性は十分高まった感じです。また、充電回数が減ったことにより、バッテリー劣化に対しても有利になります。

ただ、グレードXのホイールが、アルミホイールからスチールになっていたのには、ちょっとがっかりでした。仕方ないので、近くのオートショップで、すぐに市販のアルミホイールに付け替えました。今の流行は、黒とシルバーのツートン。車体の天井とサイドミラーの色が黒になっている新型リーフに、良く似合います。また、外部電源として使用できるAC100Vのコンセントがオプション追加されなかったことも、少し残念でした。

それと、納車から約1ヶ月間、ネット接続の通信機能に不具合があり使えませんでした。通信ユニットのファームウェアのバグだったようです。プログラムの検証が不十分だったのでしょうが、安全性に直接関係する箇所でなかったのは幸いでした。しかし、充電スポットやバッテリーに関する情報がとれないのは、とても不便です。

航続距離が伸びたことを実感したく、自宅のある甲府から羽田空港まで出かけました。前夜自宅の200Vコンセントで満充電にし、航続可能距離は202km。残量20%からの充電で約8時間かかっていました。新型のバッテリー容量は増えていますが、夜間8時間の単価料金が安い契約で、ほとんど問題なさそうです。いよいよ出発、甲府からは、中央自動車道に乗り、東京方面に向かいました。途中標高700mの笹子トンネルを越えてからは、長い下り勾配になっています。そして、中央自動車道から首都高速に入り、2時間半ほどで羽田空港に到着。約140kmの距離を走り、到着した時のバッテリーの残量は32%、平均電費は8.1km/kWhでした。初期型リーフでは、笹子峠を越えた時点で、急速充電を行います。しかし新型では、東京の八王子までの約85kmでも、残量は58%もあり、そのまま羽田空港を目指して余裕で走ることができました。バッテリー残量計の減り方が少なく、安心感がまるで違うというのが実感でした。バッテリー性能に最も厳しく、暖房を使う真冬でしたが、期待以上の結果でした。

羽田空港では、P4駐車場の急速充電器を利用し、32%から60%まで充電。リーフの充電性能も良く、9分ほどで終わりました。充電に対する課金はなく、駐車料金も30分までは無料です。

宿泊したのは、空港近くのホテルです。その地下駐車場で、持参した可動式のAC100V専用コンセントを使い、夜間に満充電。翌日、甲府に向かいました。これまでは、中央自動車道の談合坂SAでの充電が必要でしたが、新型では途中で追加充電することはありませんでした。もちろん高速道路のサービスエリアに充電スポットがあるにこしたことはありません。しかしながら、新型リーフでは、宿泊時に夜間充電できると、ほとんど必要ない感じになります。

また、笹子トンネルを出た後の下りの急勾配では、強い回生ブレーキとなるBモードがその威力を発揮。フットブレーキを使わないので快適でした。ただ、初期型のDモードでは、アクセルを離した時、ほとんど回生ブレーキはかかりませんでした。しかし新型では、ある程度のブレーキがかかるようになっており、違っています。なだらかな下り勾配などでは、滑空する感じで走るのが面白かったのですが、それはなくなりました。

 二日目の走行距離は約135km、バッテリー残量34%、平均電費7.5km/kWh。全くの余裕で、帰ることができました。この日の天候は良く、暖房の使用はなしです。但し、甲府の標高は約250mあり、帰りの平均電費の方が悪くなっています。

甲府盆地は四方を山に囲まれており、どの方向でも、ほとんど峠越えとなります。その上り坂では、バッテリー残量が急激に減るため、初期型では、その峠を越えたあたりで必ず追加充電が必要でした。しかし、それがなくなったことにより、充電スポットの利用可否の確認や時間的なロスもなく、予想以上に利便性の向上を感じました。また、充電設備の故障などに対する心配も、必要なくなります。仮に充電をするとしても、十分余裕を持って行うことができます。盆地以外の地域でも、この航続距離の伸長は、とても大きな効果を生み出すのではないかと思われます。

また、バッテリーの充電性能も向上しました。新型の電気容量は、24kWhから30kWhに増えています。しかしながら、急速充電による80%充電の時間は、短い時間で、今までより多くの電気を充電できるようになりました。これも今回のマイナーチェンジの目玉になっています。実際に行った25%から80%の急速充電では、真冬なのに25分位で終わりました。約15kWhも充電されており、この分で100km位は走れます。初期型リーフは、冬だと40分以上かかり、それも約9kWh程しか入りませんでした。充電する時の電流の違いであり、すごい進歩です。

新型リーフは、細部にわたって、しっかりと進化していました。全体的に高級感が増しています。ドアの閉まる時の音、シートのすわり心地、車体のアブソーバーなどが改良されており、乗り心地もとても向上していました。また、付属している充電用ケーブルは、低温時でも柔らかな素材に変わっています。そして、それを差し込む充電ポートには、LEDランプが付き、暗闇でも作業し易くなっていました。

今の生活で、日常乗る距離は、1日だいたい10〜30km。遠出の時は、多くても1日に150kmほど。このようなライフスタイルに、新型のバッテリー容量は、ちょうど良さそうに感じました。但し、バッテリー劣化は、4年位たっても10%以下であることを期待しています。結果がどうなるか、今から興味津々です。

新型リーフの高い完成度を知ると、最初に販売された初期型が、いかに多くの課題を持ったEVであったかが良く分かります。しかし、乗用車タイプの初の量産型EVであり、先駆者としての役割は、十分に果たしたとも言えます。また、開発・販売したメーカーも、それを買ったユーザーも、とても勇気ある行動であり、EV時代の幕開けに寄与した貢献者に、間違いなくなりました。

数年後には、リーフのフルモデルチェンジも期待でき、さらなる進化が続きます。航続距離の伸張はすでにアナウンスされており、いよいよ本格的なEV時代が到来するのではないでしょうか。

日産リーフを3台乗り継ぐ 小林薫氏が寄稿 長期レポートの前後関係

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