ボルボS60 T3 SE
公開 : 2016.03.10 23:55 更新 : 2017.05.29 19:08
■どんなクルマ?
ボルボのイメージは世代によってかなり違っているのではないだろうか。1960年代に入ってからのボルボ車は角張ったスタイルの実直なセダン&ステーションワゴンのイメージが強い。現在のダイナミック&プレミアム・デザイン路線はボルボ初のFF車として誕生した850のビッグマイナーからで、車名もS/V70となっている。このS70の実質的な後継モデルがS60と考えてよい。
現行S60に新たなラインアップとして登場したのが、ここで試乗したT3 SEである。ボルボ社は新世代パワートレイン戦略としてエンジン本体の基本構造の共用化を図るドライブ-E(DRIVE-E)を展開しているが、その最新モデルとなるのがT3パワーユニットである。日本仕様S60へは従来ラインナップのT4系との代替となり、S60系ではベーシック・モデルとなる。
T4からT3の変更はドライブ-Eの序列からすればグレードダウンの印象も強い。実際、同じダウンサイジング・ターボでもT4は2ℓ、T3は1.5ℓであり、最高出力は38ps減、最大トルクは5.1kg-m減となっている。しかし、S60のJC08モード燃費はT4より約11%アップの16.5km/ℓ。省燃費時代への適性を考えればどちらを是とするかは説明不要だろう。ちなみにT3を日本向けベーシック・モデルに採用するのは当初から決まっていたが、パワートレイン開発の時系列の問題で先にT4が導入された。その点では「待望の」と前置きしてもいい。
■どんな感じ?
T3のボア、ストロークはT4のストロークのみ22.3mm短縮した82.0mm×70.9mm。具体的にはクランク・アーム長短縮とコンロッド延長で排気量ダウン。これはヘッド周りやシリンダーブロックの部品レベルでの共用化率を高めるのが狙いであり、ダウンサイジング・ターボを中心に最近のエンジン設計ではよく見られる手法である。
上級設定エンジンとの部品等の共用は贅沢な設計と言えるが、ショート・ストロークは省燃費性の点では得策とは言い難い。しかし、T3は省燃費と実用動力性能の高水準での両立を図るべく、T4以上に採用されているバランスシャフトを廃止し、高効率化も進めている。