ロールス・ロイス・カリナンのウィンター・テスト
公開 : 2016.03.11 22:20 更新 : 2017.06.01 01:35
ロールス・ロイス初のSUVモデル、カリナンは、2017年のデビューを前にウィンター・テストが行われている。
ファントムのボティを借りてテストが繰り返されているが、その全長はカットされ、まるでチョロQのようなボディを被せられてのテストとなっている。リア・ドアも短くされ、グラウンド・クリアランスが大きくなり、ファントムとは異なったフロント・エンドのエア・インテイクが与えられているのも特攻だ。
ロールス・ロイスによれば、このテスト・モデルの全長はほぼプロダクション・モデルに近いという。また、このテスト・モデルは、主に新しい4輪駆動用トランスミッションとサスペンション・システムのテストが目的だという。特に、サスペンションに関してはファイナル仕様ということになる。その目的はオンロードであろうとオフロードであろうと「魔法の絨毯」に乗っているかの如く乗り心地を提供することにある。
ネーミングに関しては、まだロールス・ロイス社内でも決定していないという。ただし、開発はRR31というネーミングで進められている。カリナンとは、現存する最大の大きさのダイヤモンドからとったもので、1905年に南アフリカで発見されたもの。現在は、女王陛下の王冠に付けられている。
ロールス・ロイスの4×4モデルの存在は、昨年2月18日に公開されたロールス・ロイスのCEO、トルステン・ミュラー・エトヴェシュと会長であるピーター・シュワルツェンバウアーの署名の入ったステークホルダー宛て、つまりカスタマー、従業員、サプライヤー、そしてメディア宛ての書面で明らかになっている。
「すべてが新しいボディを持ったロールス・ロイスを開発していることを発表できることは誇りに思う。」とエトヴェシュは語ったが、その際に、ニュー・モデルに関して “SUV” という単語を敢えて避けた。「このモデルは、最高のラグジュアリーを与えるというわれわれのブランドに課せられた使命を果たすものだ。」ともコメントしている。
この4×4モデルの登場は、ロールス・ロイスの売り上げを10年間で3倍にするという計画の一翼を担うものとなるだろう。昨年、ロールス・ロイスは4,000台のモデルを販売したが、ロールス・ロイスの関係者によればあくまでこれは通過点でしかないと考えているようだ。
また、ロールス・ロイスの顧客の多くが、他とは違うモデルを望んでいるという点も見逃せない。ベントレーは、今年後半にSUVモデル、ベンテイガを発売する予定だが、ロールス・ロイスの4×4モデルは、そのベンテイガよりもサイズ的にも価格的にも大きく上回ることとなるだろう。
デザイン責任者であるジャイルズ・テイラーは、ファントム・クラスの巨大なモデルを製造することについては、何も問題を感じてはいないという。実際、4×4モデルも、その長さはほとんどファントムに近いものとなる予定で、モダンで誇りを感じさせるようなフロント・グリル・デザインを持つ。
現時点ではロールス・ロイス関係者はその価格に一切触れないが、フル装備だと£500,000(9,200万円)程度、ベーシックなモデルでも£250,000〜£280,000(4,600〜5,100万円)程度と予想される。
4×4モデルは、すべて新しいアルミニウム製のアーキテクチャーで、将来的にはすべてのロールス・ロイスの基礎となるスペース・フレーム構造となると思われる。エンジニアリング的には、どんな地形でも横断することのできるパフォーマンスを持っているという。
ロング・ホイールベース・モデルを持つ今年11年目となるファントムを見る限り、数の少ないモデルについてはスペースフレーム・シャシーのほうが優位なことは明らかだ。ベントレーやマイバッハのようにある程度量産が期待できるのであれば、モノコック構造のほうが安くつき柔軟性も高いのだが、ロールス・ロイスに関しては、コスト的な面は重要視しないと思われる。従って、将来的にもスティール・モノコックといった量産車のような構造は採用しない方針だ。
エンジンはファントムから移植された6.8ℓのV12をベースに専用のチューニングを与えたものが搭載される予定。ロールス・ロイスの顧客は、エンジンがパワフルで静かでスムーズであれば文句は多く言わないという。ロールス・ロイスは、プラグイン・ハイブリッド・モデルや、2011年には102EXというEVモデルもテストしている実績はあるが、今回は見送られることになりそうだ。また、ディーゼル・モデルもプロトタイプとして実験されたが、やはりその静粛性に問題がありとして、採用は見送られた。しかも、ロールス・ロイスのメイン市場となる中東、中国、アメリカではディーゼルの必要性を感じていないという。