一方のXC90は、リア・アクスルをモーターが直接駆動する。よって踏んだ瞬間に車輪が回るダイレクト感がある。特にこれは、ストップ＆ゴーを繰り返すシチュエーションでストレスがたまりにくい。EVらしくもある。

幹線道路において内燃機関の助力がない場合、X5が変速を拒んでいるのも気になる。その点XC90は、電気アシストらしい加速を披露してくれ、100km/hに到達するのはあっという間。リラックスして走らせられる。

さて、旅の後半。ウェールズの峠道に舞台を移そう。どちらのクルマもバッテリーは ‘満タン’。どのようにドライブできるかによって、燃費も変わってくるだろう。もちろんシステムの完成度も結果を左右するはずだ。

メーターを見ていると、走らせはじめた直後からあまり好ましくない燃費数値をどちらのクルマも披露しはじめる。XC90は10.6km/ℓ、X5は7.1km/ℓ。ハードにいじめたことが理由であることは間違いない。ただし、われわれが価値を置くモータリング・ライフは、常に燃費の数値とにらめっこすることではないと思っている。この場合、やはりハイブリッドのもたらす加速感には、峠道では胸のすくものがある。

ディーゼル・エンジンを搭載したモデルの簡潔なドライビング・プレジャーはハイブリッドに期待すべきではないのだが、やはり速いのは嬉しい。なかでもボルボの身のこなしには、他メーカーにないものがある。冒頭にも挙げたカイエンS E-ハイブリッドやGLE 500eのようなマッスル的な要素はない。けれど60km/hを過ぎたあたりから110km/h程度までの、後ろから張り手をくらうような勢いある加速に無意識に高揚する。