メルセデス-AMG SLC43
公開 : 2016.04.08 23:50 更新 : 2017.05.23 16:35
ただこれも、注目に値するレスポンスが確保されておらず、かつての5.5ℓV8 NAユニットのように高速域の壮麗な世界観も失われている。SLK55が少し恋しい。
しかし0-100km/hタイム=4.7秒という数値は、SLKの4.6秒まで0.1秒のところまできている。それに、はるかに低い回転域で最大トルクが湧くため、体感的に速く感じる。興奮はしないが、速いことはよくわかる。
バンク角60°のこのエンジンが自慢とするのは、ミドル・レンジのフレキシビリティである。ギアが2段増えたこともあって、クルーズも極楽。12.8km/ℓをマークするうえCO2排出量も178g/kmまで抑えている。
そう、SLC43の長所は速さとリファインメントの両立なのである。ハード・トップの開閉は、先述のとおり実に楽になったし、オープンの状態で225ℓ、クローズすると335ℓまで拡大する荷室も高評価に値する。
どうしても足を引っぱるのが、パッとしない動的性能だが、そのなかでもフロント・アクスルのジオメトリーを独自のものとし、可変レート・ステアリングとともに、従来よりダイレクトな印象にしようとしている。
予想どおりライドは硬めだが、これまでのSLK55 AMGの、むやみな ‘不屈の精神’ は過去のものとなった。サスペンションに負荷がかかっているときに窪みを踏むとストラクチャーがブルッと震える時もあるが、そのあとはあっという間に収束してしまう。