3位 – ポルシェ911 GT3 RS

ロケ当日の早朝、私はいつもより早く目が覚めた。ガレージには昨日借りだしたGT3 RS。いそいそとシャワーを浴び朝食を済ませ、GT3 RSに乗って、やっぱりいつもより早く山の頂上に着いてしまった。

クルマが少なかったことと、路面コンディションが比較的よかったのは確かだが、なによりGT3 RSが私の ‘欲’ を搔きたててくれたのは間違いがないだろう。

狂気じみたポルシェのエンジニアは、ベーシックな911を単に速くすることに飽きたらず、乗る者の心をガッシリと掴むクルマを作りあげることに成功した。

こうやって文章に起こしている今でも興奮はつづいているのだが、やはり記憶に強く残るのは8250rpmで500psを叩きだす4.0ℓフラット6についてだ。

ターボによる助力を受けずに、生みだされるパワーは極めて強烈なもの。高らかに回るこのユニットのサウンドそのものも、空気を大きく揺さぶる。

シャシーはいい意味でも悪い意味でも従順だ。決してドライブするのは簡単ではないし、ミスをすれば、そのとおりの挙動が冷徹に返ってくる。

ただ仮に、超高性能スポーツカーを欲し、それをきちんと操れるだけの技量があり、正直な挙動を受けいれられるのならば、GT3 RSほど刺激的なクルマはない。

GT3 RSは使い古された表現がまるで似合わないクルマでもある。スキルを習得し、完璧なドライビングが実現した向こう側には、賞賛も待っているだろう。

限られたドライバーにしか、等しく喜びを得ることができない点が順位をとどまらせたが、われわれの ‘偏愛’ を助長させる独自のポジションを築いている。