ボナムス・モナコ・セール

●2016.05.14 モンテカルロ／モナコ

3月のグッドウッドを最後にメジャー・オークショナーは春休みに入り、4月は1件も開催されなかった。しかし、ピークとなる夏に向けてリスタートとなったのが、モナコでのオークションだ。

 
F1モナコGPに先駆けて行われるグランプリ・ヒストリック・モナコは、往年のグランプリ・マシンでグランプリ・コースを走れることから、エントリーを集めている人気イベントである。もちろん街中の公道コースで行われることから、世界中からエンスージァストが集まるため、これにあわせてコレクターズ・オークションが開かれるようになっている。今年もふたつのオークションが開かれ、まずボナムス・モナコ・セール行われた。

今回はモンテカルロのフェアモント・ホテルで行われたことから、オートモビリアが10点、車両が41台というこじんまりとしたオークションとなった。会場の関係から収容台数が制限されていたことから、貴重なモデルが数多く用意されていたのが特徴である。

その中で人気を集めたのが当時エキュリー・フランコルシャンから参戦し輝かしいヒストリーを持つ1953年型ジャガー XK120C Cタイプだ。現在最もオリジナルを保つCタイプだけに入札が続き8億9114万円で落札された。2番値は順当にフェラーリ 288GTOが2億2350万円まで値を上げた。3番値は、ここにモナコゆかりのミハエル・シューマッハが乗ったベネトン B191/191B フォードとブガッティ・タイプ 35 グランプリ 2シーターが、奇しくも同じ落札額となる1億3014万円で続いた。

しかし1億円を超えたのはこの4台だけで、全体を見ると最低落札額まで届かず流れてしまう物件が多かった。今回の落札率は56.09%で、3月のアメリアアイランドでRMサザビースが87.23%、グッディングが87.5%だったことを考えると、大きく潮目が変わっていることを実感させられる。

ジャガーCタイプのように本当に価値のあるものは正しく評価されるが、本来の価値より価格が先行してしまったアルファ・ロメオ 6C1750 スーパー・スポルト、フェラーリ250GTルッソや512TR、ポルシェ911カレラRS、911ターボ、デ・トマゾ・ヴァレルンガなどは、最低落札額と入札者がイメージする金額が折り合わず流札になっている。

3月の段階で昨年ほどの勢いは無くなっており、その後の世界経済の先行き不安感が増大したことに加え、投機筋にとって絶対的に安全な対象物でなくなったことから、より失速したものと思われる。

一方でエンスージァスト向けの、現実的長くのクルマは活発に動いている。価格的にも昨年に較べ1〜2割ほど落ちてきたようだ。しかしランチア・ラリーSE037プロトタイプやイゾ・グリフォ 5.8L シリーズ II、タルボ・ラーゴ T14 LS スペシャル・クーペなどは、一般のファンにはカルト過ぎたのか残ってしまった。

このほかモナコらしいクルマといえる、フィアット1100のエンジンを利用したモレッティ・ブランカ・フォーミュラ・ジュニア（595万円）や新旧フィアット500をベースにしたビーチカーが人気を集めた。

今回のモナコ・セールは出品車が41台と少ないため、ここではオークションにかけられた全車と、イギリスで作られた85ccエンジンを積むジョモロ社のチャイルドカーをご覧いただこう。