ポルシェ718ボクスターS vs ロータス・エリーゼ
公開 : 2016.06.06 23:50 更新 : 2017.05.29 19:30
‘不快’ という言葉は一方のボクスターSにとって無縁のようだ。シートはエリーゼのそれと比べると高級羽毛布団みたいだし、足元の広さもエグゼクティブ・サルーンみたいだ。トリムの質感なんて、そこらのパブからケンジントン宮殿に入ったような気分にさせてくれる。
インテリアの質感は、近年のポルシェ・ブランドに期待することそのものであり、最新のインフォテインメント・システムが一層、高品質さを引き立てている。
スポーツカーという乗り物に対して、確固たる信念をもつカスタマーならば、「そんなにやわらかい素材って必要?」ということになるかもしれないが、ボクスターSの内装を否定する材料は見当たらない。
それにボタンひとつで屋根が開く。対するエリーゼは、一旦クルマをとめて、幌をくるくると巻き取らなければならない。急に雨が降ってきたらどうすればいいのだろう? ピーク・ディストリクト国立公園に向かう途中、そんなつまらないことさえ考えてしまった。
目的地までは、スネーク・パスとよばれるグロソップとレディバワー貯水池をまたがる田舎道を通ることにした。有名な道ではなく、バイカーや鳥類が好む道だ。
早朝にわれわれが到着したときには、あたり一面をぶ厚い霧が覆っており、前日の雨もあり、あたりの草木はじっとりと濡れていた。そこにあるのは二重の白線に区切られたどこまでも伸びる道だけだった。まずはボクスターSから走らせよう。4ポット・エンジンのもたらすエグゾースト・ノートは、チタン製の分度器にように注意深く調音されている。ミドル・レンジの音は、ザラついているわけではなく低音が効いている。
この時点で、世界クラスの完成度だといっていいほど従順でもある。フォルクスワーゲン・ゴルフRの2ℓ4気筒エンジンも頭をかすめるが、低回転域からのレスポンス、高い回転域まで回りたがるキャラクターを考えると、ボクスターSのエンジンの方がいいと思える。