ベントレー・ミュルザンヌ・スピード
公開 : 2016.06.14 23:35 更新 : 2017.05.29 19:02
いざ火を入れると、8つの大きなピストンは思慮深きアイドリングに徹する。ZF製8速ATを ‘D’ レンジに入れ、鋳造合金のうつくしいアクセル・ペダルを踏めば、ジャンボ機がテイクオフするかのように、長いボンネットがふわりと浮いて、粛々と進みはじめる。
粛々と進みはじめるものの、ひとたびアクセルを強めにふめば、むしろ野蛮ともいえるほどの加速を披露してくれる。そのころにはV8の刻むビートも色彩に満ち、エンジンがガソリンをごくごくと飲むのがわかる。
トルクが強大だから、必ずしもエンジンにむち打ち必要はない。6速、1000rpmでも、まごつくことなく前に進み、静かなままにクルーズすることも簡単だ。
プレス・カンファレンスにて、静粛性のためにダンロップに専用タイヤの制作を依頼し、サブフレームに油圧の新式マウントを奢り、エンジンマウントを可変式にしたと、ベントレーがアピールしていたことも思いだした。同時に微塵も期待していなかったことを後悔した。
110km/hを超えたあたりでは、音という音はほとんど聞こえてこず、さらに160km/hを積み重ねても(もちろんアウトバーンでの話だ、悪しからず)、ミラーが風を切っているのがかすかにわかる程度だ。