メルセデス・ベンツのAMGパフォーマンス・ディビジョンは、583psを発揮する4.0ℓV8を搭載したGTシリーズのトップ・モデル、GT Rを発表した。このモデルは、ニュルブルクリンク24時間で勝利を上げたGT3のロードバージョンともいうことのできるモデルである。発売は11月からを予定しているが、価格はまだ明らかにされていない。

メルセデス-AMGのCEO、トビアス・メールスは、「GT Rのパフォーマンス・レベルは、われわれが次のレベルに達したことを示すものだ。GT Rは、最新のレーシング・モデル、GT3のダイナミクスを、スタンダードなGTに結合させたモデルとも言える。」とコメントしている。

リア・ホイール・ドライブのGT Rは、メルセデス-AMG製のM177型V8ユニットの最もパワフルにチューンされたものを搭載する。この4.0ℓユニットは、再設計されたエンジン・マッピング・プログラムと、高いコンプレッション・レシオが与えられている。583psのパワーは、これまでのトップ・モデルであるGT Sよりも75ps大きく、トルクも71.3kg-mと5.1kg-mほど大きくなっている。

組み合わせられるトランスミッションはAMGスピードシフト7速デュアル・クラッチだが、1速のギア比が高められ、7速のギア比が低くなっている。また、ファイナル・ドライブ・レシオも低くなり、レース・スタート機能はよりアグレッシブに変更されている。

軽量化も施され、チタニウム・サイレンサーと20インチの鍛造アルミ・ホイールが与えられる他、ルーフはカーボンファイバー製となり、遮音材と装備が簡素化されている。

公式にアナウンスされたパフォーマンスは、0-100km/h加速がGT Sよりも0.2秒速い3.6秒。パワー・アップはもちろんのこと、専用チューンの電子制御リミテッド・スリップ・デフとワイドになったリア・トレッド、そして325/30サイズのミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2などによってトラクションが増加した結果である。

エクステリアは、今後のAMGモデルのキーとなるデザイン・ファクターが盛り込まれている。最も特徴的なのはパナメリカーナ・グリルと呼ばれるフロント・グリルだ。

リアに取り付けられるアクティブ・ディフューザーは、レース・モードで80km/h以上になると40mmほど前方へ移動する。これによって、250km/h時にフロント・アクスルに40kgの力を発生させリフトを防ぐ。また、リアに取り付けられた大きなカーボンファイバー製のリア・ウイングは、319km/h時にプラス155kgのダウンフォースを発生させるというもの。

こういった空力的な付加物が追加されたにも関わらず、そしてファイナル・レシオと7速のギア比が落とされたにも関わらず、そのトップ・スピードはGT Sよりも6km/h上がった319km/hとなっている。

AMGはハンドリングを向上させるために、エグゾーストとカーボンファイバーのトルクチューブの下に新しいカーボンファイバー製のクロスメンバーを採用した。これにより捻り剛性はGT Sに対して7.5%向上しているとアナウンスされている。また、カーボンファイバー製のエンジン・ブレースによってフロント・エンドの剛性アップも図られている。

サスペンションは、4輪ダブル・ウィッシュボーンで、コンフォート、スポーツ、スポーツ・プラスという3つの切り替えモードを持つ。フロント・サスペンションのウィッシュボーンとステアリング・ナックル、ハブ・キャリアは鍛造アルミニウム製となり、バネ下重量を減らしている。リアのウィッシュボーンには、通常のブッシュに代えて新しいユニボール・ベアリングが採用され、トーインとキャンバーの値が大きくなっている。

GT Rのシャシーの変化で最も大きいのはステアリングである。スピード・センシティブ・バリアブル・レシオ・ラックと、メルセデス-AMGとして初めての装備となる4WSが採用されているのだ。この4WSは、100km/h以下ではアジリティを良くするためにフロントと逆位相に、そして100km/h以上ではスタビリティを増加させるためにフロントと同位相にリア・ホイールをステアする。その角度は1.5°。2つのモーターによって動作する。

ブレーキは、通常はフロントがφ390、リアがφ360のベンチレーテッド・ディスクだが、オプションでフロントがφ402、リアがφ360のカーボン・セラミック・ブレーキを選択することも可能だ。

AMGは、このGT R専用のペイントとなるグリーン・ヘル・マグノというカラーリングを施したニュー・カーの写真を公開した。このグリーン・ヘルとは、言うまでもなくニュルブルクリンクのノルドシェライフェの別名である。