ヴォグゾール・アダム1.4スラム
公開 : 2012.11.06 18:33 更新 : 2017.05.29 18:29
■どんなクルマ?
ヴォグゾールは、ミニとフィアット500の成功を参考に、販売面での成功と利益の獲得を目指したサブ・スーパーミニを造り上げた。それがこのアダムだ。この全長3.7mの新しい3ドア・ハッチバックは、今週からプレス向けの試乗が開始されるとともに、来年3月には英国のショールームに並ぶ予定である。
しかし、このアダムは、ミニやフィアット500と異なり、そのベースとなるモデルは存在しない。ミニやフィアット500は、過去のモデルのスタイルを上手く採り入れることで、そのキャラクターを作り上げてきたが、そのアイコンとなるモデルがヴォグゾールには存在しないことを、メーカーは早くから自認してきた。
従って、マーケティングにおいては3つの点から攻めることとした。
まず最初はわかりやすい名前。第2にライバルとは異なり、徹底して現代的な作り。そして3つ目は、そのバリエーションの豊富さだ。
基本的にそのトリムは3種類がラインナップされる。11,255ポンド(144万円)からのジャム、12,650ポンド(162万円)からのグラム、そして13,150ポンド(168万円)からのスラムだ。しかし、これだけではない。アダムの装飾とオプションはほとんど無限大といって良いほどある。例えば、ホイールは、20のサイズとスタイルが選ぶことが可能で、12のボディ・カラー、3つのインテリア・トリートメント、ヘッドライナーやミラー・キャップといったものも選択可能だ。更に、ボトム・ピラー、ミラー・カバーのカラーも選ぶことができるし、LEDとクロムビットがセットとなったアーバン・パック、カラード・ルーフとポリッシュ・アロイのセットとなったスタイル・パック、コネクティヴィティとリア・パーキング・センサーのテクニカル・パックを追加することも可能だ。数えたことはないということだが、100万以上の組み合わせが可能というから、街なかで同じ仕様のアダムと並ぶことはまずないといって良いだろう。
■どんな感じ?
可愛らしいプロポーションと大きなヘッドランプが特徴的なアダムは、コルサよりも300mm短く、ホイールベースも200mm短い。しかし、このクラスとしてはアダムはトップクラスの広い室内を持つ。
コルサのスティール・モノコックを基本的にベースとしてはいるものの、プラットフォームはほぼ一新された。フロントのマクファーソン・ストラットは大きく手が入れられ、電子制御のパワー・ステアリングが装着される。
エンジンは3つのバリエーションが用意される。すべて4気筒16バルブのVVTユニットで、69bhpの1.2リッター、86bhpと99bhpの1.4リッターだ。ディーゼルの必要性をGMは感じていないようだ。しかし、より小型の1.0リッター3気筒エンジンは、いずれラインナップに加えられることになろう。われわれのテスト車輛は99bpの1.4リッターで、スポーティなスラム・トリムを持ったモデルだった。ちなみに、グラムは洗練された、そしてジャムはカラフルなトリムだそうだ。
われわれのクルマは、イエローのボディにブラックのルーフ、そしてブラックのシートにイエローのアクセントが入ったモデルだ。
アクセスは非常にイージーだ。それは、ミニより75mm高いドアによるものかもしれない。そして、その内部の広さは印象的ですらある。このクラスの中では、リア・シートへのアクセスは最も良い。
また、そのクオリティも高さも印象的だった。ヴォグゾールのデザイナーは、この見事なキャビンが乗るものを心を引きつけることを熟知しているのかもしれない。
しかし、ステアリングを握り走り出すと、一気に期待はずれが押し寄せてくる。1.4リッター・エンジンは特別なものは何もない。そういった意味においてはOKなのかもしれないが、パフォーマンスは平均点でしかない。ヴォグゾールによれば、最高速度は185km/h、0-100km/h加速は11.5秒、そして燃費は18.2km/l、オプションのアイドリング・ストップを付けたモデルでは19.6km/lだという。C02排出量も129g/kmだ。
1.0リッターの3気筒もそうだが、GMが小さなターボ・エンジンの開発を急いでいるのも頷ける。その現代的なルックスと比較すると、このアダムのドライビング・フィールは何もかもが遅れているのだ。それは、ミニやフォルクスワーゲンUp!には到底及ばない。
乗り心地は、街中では凸凹を伝える。ステアリングも最初は機敏かなとも思えるのだが、洗練された敏感さがない。グリップ・レベルは高く、ロールも少なかったが、積極的に攻める類の味付けでもなく、ブレーキの効きもいまひとつだった。また、そのギアレバーの感触は前後に離れすぎていて、まるで10年以上昔を思い起こさせるものだった。
■「買い」か?
テストした車輛はまだ開発段階だったのかもしれない。ヴォグゾールのシャシー責任者であるゲーリー・ベーカーも改良の余地があることを認めている。おそらく、ショールームに並ぶクルマはもっとましになっていることだろう。
確かに、アダムは人目を引くデザインであり、その際立ったカラーリングやトリムは非常に印象的だった。Up!やミニでは指定することができない部分まで選択刷ることが可能だから、そういった意味においてはオーナーは楽しめるかもしれない。
しかし、現状、運転に熱心な人には薦められるクルマではない。何の変哲もないエンジンと、期待はずれのステアリング……。最低でも新しいターボ・エンジンは必要だ。そして、ヴォグゾールはそれを早急に用意する必要があるだろう。
(スティーブ・クロプリー)
ヴォグゾール・アダム1.4スラム
価格 | 14,000ポンド(180万円) |
最高速度 | 185km/h |
0-100km/h加速 | 11.5秒 |
燃費 | 18.2km/l |
CO2排出量 | 129g/km |
乾燥重量 | 1135kg |
エンジン | 4気筒1398cc |
最高出力 | 99bhp/6000rpm |
最大トルク | 13.3kg-m/4000rpm |
ギアボックス | 5速マニュアル |