text:Kazuhide Ueno (上野和秀) photo:LE MANS CLASSIC/ACO、Mathieu Bonnevie、Dominique Breugnot、Stephanie Bezard
耐久レースを代表するル・マン24時間は、1923年に開始されて以来数多くのドラマを生んできた。今年もトヨタが優勝確実と思われたが、ゴール5分前にトラブルに見舞われ、涙をのんだことは記憶に新しい。そのル・マン24時間レースに参加した往年のマシンで競われるヒストリックカー・レースがル・マン・クラシックだ。現代のWECの1戦であるル・マン24時間レースが行われた3週間後の7月8日〜10日に同じコースを使って行われるもので、往年のマシンが当時と変わらぬ舞台で走れるのが人気の秘密だ。ル・マン・クラシックは2002年から始まり、本家の主催者であるACOとツアー・オートを開催するピーター・オートの共催で、今回で8回目となる。
レースは1923〜1939年までのマシンによるグリッド1、1949〜1956年のグリッド2、1957〜1961年のグリッド3、1962〜1965年のグリッド4、1966〜1971年のグリッド5、1972〜1981年までのグリッド6の6クラスに分けられる。同じ時代のマシンで走ることにより性能の差を埋めることに加え、雰囲気を盛り上げることも見逃せない。そして世界的なヒストリックカー・イベントだけに、かつてのル・マン・ウイナー達が参加することも見逃せない。
一方ドライバーもル・マンの主ともいえるアンリ・ペスカローロを始め、エマヌエル・ピッロ、ジェラール・ラルース、ジュリアン・ベルトワーズら10名のウイナーがドライブした。このほかポール・ベルモントやジャン・ラニョッティらの名ドライバーもステアリングを握っている。
そして今年のニュースは1982年から1993年までのグループCカーによるクラスが追加されたことだ。このカテゴリーは「グループCレーシング・シリーズ」として年6戦行われるシリーズの1戦をル・マン・クラシックに組み込んだもの。グループC初期のランチアLC2、ポルシェ962C、トヨタ85C、からニッサンR90 CK/R93CKから、ロンドュー、エンカ、スパイス、タイガなどの名脇役まで参加し、プジョー905、ザウバー・メルセデスC11、ジャガーXJR-16などの末期のマシンまでが姿を見せた。このクラスには日本の久保田氏がニッサンR93CKで参加しており、必勝態勢で臨んだ。
レースはグリッド1〜6の各クラス共43分のレースを3スティント走行するのだが、その中にはもちろんナイト・セクションも含まれる。本家24時間レースと同様に土曜日の午後4時にグリッド1のスタートで始まり、日曜日の午後4時にグリッド6がフィニシュする。グループCレーシングはこれらとは別枠で行われ、土曜日の12時から45分のレースが1本行われるのみとなっている。
今回は合計550台の参加を数えドライバーは1000人を超える大イベントに成長している。もちろん観客にとっても各年代のマシンが本気で走る姿を見ることができるレースだけに、両日で12万3000人が詰めかけた。
ル・マン・クラシックの見所は24時間のレースだけではない。今年はフォードがル・マンで優勝してから50周年に当たることから、フォードGT40を集めたエキジビションが行われた。プログラムは金曜日から始まり、各クラスの予選に加え、ジャガーだけのレースも行われている。このほか参加したクラブによるパレードランや、フェラーリ、BMW、GT40だけのパレードラン、変わったところではクラシック・バスのパレードに加え、ル・マンの名物である未来のレーシング・ドライバーがドライブするキッズカーの「Little Big Mans」がコースを走行した。
見所はコースだけではない。パドックではクラブ・ミーティングが行われ、60メーカーの180ものクラブが参加し、なんと8500台が集まったと言う。展示のみならず参加したクラブによるパレードランも行われ、ル・マンは趣味の世界となっていた。もちろんヴィレッジではスペシャル・ショップが並び、ドライブイン・シアターやサーカスも用意され全部見切れないほど。また土曜日の午後2時からはアールキュリアル・オークションも行われ、どれを見るか迷うほどの充実ぶりだった。
ル・マン・クラシックは単なるヒストリックカー・レースの域を超え、元祖ル・マン24時間に勝るとも劣らぬ夏の風物詩と言える存在になっていた。機会があれば本場のヒストリックカー・レースの奥深さを実感できるだけに、是非一度足を運ぶことをお勧めしたい。なお次回は2018年に開催が予定されているのえ、今から見学を計画してみてはいかがだろうか。
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ル・マン24時間と同様に土曜日午後4時にスタートする。ドライバーがフラッグと共にマシンに駆け寄る。
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往年の優勝車のベントレー4 1/2ℓル・マン、アルファ・ロメオ8C2300を始め歴代の勇者が勢揃いした。
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ナイト・セクションもあり、ライトの暗いこのクラスは苦戦。闇を切り裂くアストン・マーティン2ℓスピード。
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グリッド2は1949〜1956年製の戦後モデルで競われる。マセラティ300Sを先頭にポルシェ・コーナーに入る。
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ル・マンに欠かせないフランスの小排気量のスポーツカーもちゃんと参加。こちらはDB HBR53。
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1955、1956年と2年連続で優勝を飾ったジャガーDタイプは3台が参加し、本気の走りを見せた。
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コースインを待つ参加車達。‘50年代のル・マンを闘ってきたほとんどのモデルが集まった。
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スポーツプロトタイプのマセラティ300Sは、なんと3台が姿を見せ、A6 GCSやOSCA S 1500も出走。
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小排気量ながら高い走行性能から侮れない存在であるロータス11。今回はスイスとドイツからやってきた。
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朝日を横目に駆け抜けるロータス11とマセラティT63バードケージ。クラスはモデルの製造年で分けられる。
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1957〜1961年に作られたモデルのクラスであるグリッド3は、おなじみのタイプが多くなってくる。
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グリッド3のナイト・セクションは、午前3時22分に安全性に配慮してローリング・スタートで開始される。
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空力性能を追求したといわれる独特なスタイルが特徴のフェラーリ250GTブレッドバンも参加。
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スポーツカーが少ないグリッド3にあって存在感を放っていた1959年型トジェイロ・ジャガー。
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今や超高額な存在になってしまったフェラーリ250GT SWBだけに、参加したのは硬派ドライバーの1台だけ。
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フォードのル・マン優勝50周年を祝すイベント行ったこともあり、GT40はグリッド4に10台が参加した。
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グリッド4のGTモデルはビッザリーニやシボレー・コルベット・スティングレーと多彩な顔ぶれが揃う。
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グリッド4の2本目は午前4時39分スタートのため、昇る朝日のまぶしさに耐えながらの走行となる。
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朝日に照らされたコースを進むコブラとジャガーEタイプの大集団。ポルシェ904GTSの姿も。
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フェラーリは高騰のためか前回より少なく、グリッド4では写真の250LMのほか275GTBが3台だけだった。
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1966年のル・マンで15位完走という大健闘を果たしたミニ・マーコスGTも参加し、力一杯走っていた。
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ル・マン・クラシックの花形と言えるクラスは3ℓプロトタイプと5ℓスポーツカー時代のグリッド5だ。
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ポルシェは2台の917Kのほか908/3、908/2、910、906に加え、数多くの911がレースを盛り上げた。
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フランスを代表するアルピーヌは写真のA210、A220が出走し、グリッド4では日本からのM63も参加した。
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本来はツイスティなコース用で、当時のル・マンを走っていないポルシェ908/3だが、クラシックに姿を見せた。
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アルファ・ロメオT33/3もやってきた。このほかフェラーリ312P、リジェJS-1、マートラ660も走りを披露。
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フェラーリ・デイトナ・コンペティションは2台が参加し、ローラT70は市販モデルだけに13台が集まった。
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1972〜1981年までのグリッド6のスターは1976〜1977年の優勝車であるポルシェ936だ。935も6台参加。
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1978年のル・マンを制したアルピーヌA442B/443も姿を見せ、あのジャン・ラニョッティがドライブした。
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1975年のル・マンでガルフ・ミラージュGR8が優勝を果たしたが、今回は1973年モデルのGR7が参戦した。
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‘70年代のル・マンを駆け抜けたフェラーリ512 BB LMは、なんと6台も集まりレースを盛り上げた。
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‘70年代後半はIMSA規定等のマシンも参加できるようになり、写真のダッジ・チャージャーなどの米車も参戦。
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H.ペスカローロがドライブしたのはフランスのイナテラがGTP規定で製作したマシンで1976〜1977年に参戦。
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ロードカーでもほとんど見かけないポルシェ924GTRも参加。当時のBOSSカラーを再現していた。
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ポルシェ936をドライブしたのは、アウディでル・マン5勝を記録したエマヌエッロ・ピッロだ。
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プロカー・シリーズでおなじみのBMW M1もル・マンに欠かせぬ役者だ。3台が華麗な走りを披露した。
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久保田氏のニッサンR90CKは首位を走るが残り1周でトラブルが発生し、先頃のトヨタに続く悲運に見舞われた。
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1992〜1993年の覇者であるプジョー905も参加した。プジョー・スポール・カラーは今見ても美しい。
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シルバー・アローことザウバー・メルセデスC11も参加。決勝では惜しくも1周を残して戦列を離れることに。
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懐かしのレイトン・ハウス・カラーのポルシェ962は3位でフィニッシュ。色味が当時と微妙に違っている。
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グループCレーシング・シリーズには日本で活躍したマシンが、そのままのカラーリングで参加している。
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こちらのフロムAカラーのニッサンR93CKはノバ・エンジニアリングがJSPCで走らせていたマシンだ。
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「リトル・ビッグ・マンズ」と名付けられたキッズカーのパレードが、レースのスタート前に行われた。
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キッズカーはフェラーリ、フォード、ジャガー、コブラ、ブガッティ、BMWのほかリアルなアルピーヌまで様々。
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旧いレーシングカー・トランスポーターが展示され、フェラーリ、ジョン・ワイヤ、リジェ等10台が並んだ。
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往年のル・マン・ウイナーでクラシックに参加するドライバーを紹介。赤いポロはエマヌエッロ・ピッロ。
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パドックではクラブ・ミーティングが行われ、60メーカー/180クラブが参加し、なんと8500台が集まった
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ヨーロッパのイベントだけに、ステージではライブが行われるほか、様々なアトラクションで来場者を楽しませた。
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スタンド裏ではパーツから書籍、モデルカー、ウエア類の様々なショップが並び、ここだけでも見応えあり。
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ル・マン・クラシックの参加者にはドレスコードが設けられ、参加車の時代に準じた服装での来場が要求される。
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金曜から土曜日の午前中までは、クラブやメイクスごとにコースでのパレードランが16枠も用意されている。