BMW 760Li SE
公開 : 2012.11.09 17:25 更新 : 2017.05.29 18:00
■どんなクルマ?
BMW 760iLは、7シリーズのフラッグシップで、普通の道ではほとんど見ることのできないモデルだ。というのも、英国で販売される7シリーズの多くは3.0リッターのディーゼル・エンジン搭載モデルだからだ。
760iLは、エンジニアに無制限な自由を与えられたショーケース用のクルマとも言えるかもしれない。しかし、そのボンネットの下に収められた正当な血をひくV12気筒エンジンは、今年25回目の記念日を迎える。そのスーパーカーをも唸らせる5.0リッター・ツインパワー・ターボを装着したエンジンは、537bhp/5250rpmのパワーと76.5kg-m/1500rpmというトルクを持つ。
今年はじめにフェイスリフトが行われた7シリーズにあって、このモデルを他のモデルと区別するのは、ロング・ホイールベースとV12のバッジ、そして四角いエグゾーストエンドである。
■どんな感じ?
そのピーク・トルクの発生は1500rpmと非常に低い回転だ。したがってウルトラ・スムーズではあっても、そこまで回転を上げなくても760iLは走ってしまうのだ。もし、ライセンスの取り消し覚悟であれば、あるいはアウトバーンの制限速度が解除された区間であれば、そのパワーは正当化されるだろう。しかし、それはあまり現実的でない。
もちろん、滑らかで、そして穏やかにドライブすることは可能だ。それには低いスロットル開度を与えてやれば良く、そのエンジン・サウンドは極めて静かだ。エンジン・スペシャリストによってよく考えぬかれたエンジンは、Φ89のボアと80mmで0.9というボア、ストローク比を持つショート・ストロークで、しかもV型の挟角は60度と、振動を最低限に抑えることのできるレイアウトだ。
一旦スロットルを開ければ、アクティブ・エグゾースト・フラップのターボチャージャーを備えた5.0リッター・エンジンはその血統を遺憾なく発揮する。インテグラル・アクティブ・ステアリング、ダイナミック・ダンパー・コントロール、ドライビング・エクスペリエンス・コントロール、ダイナミック・ドライブといった電子制御によってロールは非常に安定しているし、セルフ・レベリングによって姿勢も常に正しく保持される。間違いなく、このクラスでも進んだクルマであることは間違いない。
しかし、760iLは、そんな走りをするよりも、ゆったりとスローなペースで落ち着いて走ることを愉しむクルマである。とはいうものの、他の7シリーズ同様、乗り心地は固すぎるきらいがあるし、ランフラット・タイヤも不快な面を見せてしまうことがあった。
■「買い」か?
買いとはいえない。パフォーマンスは素晴らしいし、V12に掛けるエンジニアの情熱も解る。しかも豪華な内装もある。しかし、730Ldがあるのに、760iLを薦めることできない。購入費用も遥かに高いし、何より毎日これを走らせるとなると、その燃料代も馬鹿にならないからだ。
(グラエム・ランバート)
BMW 760Li SE
価格 | 101,805ポンド(1,296万円) |
最高速度 | 250km/h |
0-100km/h加速 | 4.6秒 |
燃費 | 7.5km/l |
CO2排出量 | 303g/km |
乾燥重量 | NA |
エンジン | V型12気筒5972ccターボ |
最高出力 | 537bhp/5250rpm |
最大トルク | 76.5kg-m/1500rpm |
ギアボックス | 8速オートマティック |