トヨタ・プリウスPHV
公開 : 2016.09.03 05:50 更新 : 2021.01.28 18:21
さて、低めの着座位置が得られる運転席に収まり、まずはEVモードを選んで、フォレスト・レースウェイのコースに走り出す。発進からの起動トルクが大きい電気モーターの特性どおり、軽く踏み込んでもグンッと力強くスタートして、プリウスPHVはサーキットに躍り出た。
1コーナーを右にターンして緩い高速ライト・ハンダーに進入、そのまま踏み込んでいくと、プリウスPHVはエンジン音のしないほぼ無音状態のまま、ギューンという感じで明確にスピードを上げていく。端的にいって、実用車としてはかなり満足できる加速感が、エンジン音なしの電気モーターだけで得られるといった印象である。
ただし、試乗の1ローテーションの最後の3ラップ目に入って、コーナーからの脱出でスロットルを深く踏み込んだら、加速中の車内は無音ではなくなり、ディスプレイ内からEVマークが消えた。EV最高速の135km/hを超えたわけではないが、おそらくは電力を使い込んだことによって、加速をアシストするためにエンジンが始動したのだ。
そういったEV走行の滑らかさや力強さに加えて、プリウスPHVはハンドリングの面でも好印象を与えるクルマだった。タイヤは標準サイズ、195/65R15のダンロップ・エナセーブというエコ系を履いているから、特段グリップが強力というわけではないが、コーナリングがスムーズで、しかも腰が据わっている。それを実感して、試乗会の舞台をサーキットにした理由のひとつは、ここにあったのではないかと思った。
と同時に乗り心地もプリウスより滑らかで快適だが、それに関しては、PHV化によって150kg前後増えた重量によるところ大だと思われる。一方、コーナリングに関しては、リアシート下に充電器が、同じくリア・アクスル真上のそれほど高くない位置にリチウム・イオン・バッテリーが搭載されたことの効果が、大きいと思われる。
それらの結果、前後重量配分がプリウスの62/38というフロント・ヘビーから、56/44という適正な数字に改善されている、というのだ。PHVはFWD=前輪駆動だから、厳密な意味ではトラクションが弱まったともいえるが、それ以前に前後の重量バランスが好転したことのハンドリングへの効果の方が、美点としてハッキリと感じられるのである。