フォルクスワーゲン・パサート 2.0TSI R-Line

公開 : 2016.10.11 05:55  更新 : 2017.05.29 18:56

従来110kW (150ps)、250Nmの1394ccエンジンのみ用意されていたパサート。さきにも触れたとおり機能主義のかたまりのような存在感だった。いったんスピードが乗ると追い越し加速もスムーズで高速でも痛痒感のない力強さを見せてくれたパワー・ユニットは、効率を重視する新しい時代に生きるオーナーの主義主張を感じさせてくれた。小さいことはいいことだ、とうのが昨今の自動車界のトレンドである。

そこに追加導入されたのがあえて2ℓと、もはや大排気量ともいえるエンジン搭載のパサート2.0TSI R-Lineだ。わざわざ設定しなくても……と先入観を持ちながら乗ったところ、すばらしくいいのだ。

パサート2.0TSI R-Lineの心臓はゴルフGTIと共通の2ℓユニット。6段DSG(ツインクラッチ)変速機を介して前輪を駆動する。フォルクスワーゲンの日本法人では206kW(280ps)とシリーズ中最もパワフルなゴルフRに連なるイメージを強調しているが、スポーティすぎのではと敬遠してはもったいない万人向けの出来のよさだ。

エンジンはじつにスムーズに回る。1500rpmから350Nmもの大トルクが出はじめる設定のためダッシュ力はよく、追い越しなどの中間加速もとびきり俊足だ。このエンジンは3000rpm を超えるあたりから高音成分が排気音に混ざるようになっていて、気分を盛り上げてくれる。小さいかもしれないけれど効果的な演出だ。

マニュアルをベースにした6段ギアの変速機、ギアの枚数でみれば8段、9段とより多段化しているトルコン式変速機が当たり前になりつつある昨今ではやや分が悪いかもしれない(マニュアルのダイレクト感を持つのでしようがないのだが)。しかし太いエンジンのトルクバンドにも助けられてつねに力強い加速を約束してくれる。JC08モードでの燃料消費率はセダンでリッター15.6キロ、バリアントで15.0キロだから不足はまったくないのでは。

エンジンのフィールに加えて感心したのはハンドリングだ。まずステアリングが軽快であること。操舵感は1.4ℓ版より軽めであるいっぽう、中立付近のわずかな切り角にも反応がよく、較べてみるとあきらかにパサート2.0TSI R-Lineのほうがシャープだと感じるのだ。DCC(アダプティブシャシーコントロール)というドライブモード切り換え機能も装備されており「エコ」「コンフォート」「スポーツ」とダンパーの減衰力が変更できる。

正直に書くと、僕は個人的に1.4ℓ版のややダルな印象があるステアリングが画竜点睛を欠く部分と思っていた。それだけにパサート2.0TSI R-Lineに乗ってパサートはやっぱりいいクルマなのだと改めて感心したのである。

セダンで499.9万円という価格をみるとメルセデス・ベンツC200アバンギャルド(545万円)やBMW320i(532万円)といったドイツ車の売れ線に迫るものだ。乗ったフィールでは十分に対抗できる。それにパサートには“武器”がある。

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