■どんな感じ?

実はModulo Xの誕生の影にはいささか身につまされる寂しいストーリーがある。何故、メーカー自らがコンプリート・カーと称してチューニング・アップ&ドレスアアップしたクルマを販売しなければならないかというと、ファミリーカー選びのお財布事情が大きく左右しているようなのだ。独身のクルマ好きであれば、クルマを買ってから、自分の好き勝手にドレスアップ・パーツをつけたり、チューニングをしたりということも比較的許されるが、このステップワゴンのようなファミリー向けのワンボックスでは、クルマを買ってから自由にいじるということが許されない事情がある。それこそ、奥方がそんな出費を許さないというのが現状のようだ。実際、ステップワゴンを選ぶときに奥方の意見が強いというのは、ホンダのリサーチでも明確に出ている。

そこで、メーカーが最初からチューニング・アップ&ドレスアアップしたコンプリート・カーをカタログ・モデルとして販売し、クルマ好きの旦那が、奥方をうまく「だまし」て、このモデルを買うという腹なのだ。しかも、Modulo Xの試乗車はすべてのディーラーにあるわけではないので、カタログ上で「このグレードがいいんじゃない」とか言って、あとは納車されるのを待つという図式だ。普通の奥方が、「このModulo Xっていうグレードは、試乗したステップワゴンよりもアシ、固くない？」なんて気付くことはほぼ100%ないから、納車さえされてしまえば、旦那の思うツボとなるのだ。

そんなストーリーを、メーカーは大きな声では言えないが、考えているようだ。