EV SUVのジャガーI-PACEを公開
公開 : 2016.11.15 05:55 更新 : 2017.06.01 00:34
ジャガーはその81年の歴史の中で、最もラディカルなモデル、I-PACEを発表した。
モーター駆動の電動SUVであるI-PACEは、ロサンゼルス・モーターショーで一般公開を予定しているモデルで、およそ18ヶ月後から生産が開始される予定だ。このI-PACEは、ジャガー・ランドローバーの新しい歴史を造り出すモデルである。
ジャガーはこのI-PACEについて、広大で、スポーティで実用的なパフォーマンスSUVとアナウンスしている。そして、そのデザインは、F-PACEとほぼ同一かという予測もあったが、そうではなく独自のデザインが与えられている。また、EVによる4輪駆動だが、そのパフォーマンスはリア・ホイール駆動のF-タイプRを凌ぐものとアナウンスされている。
I-PACEのプロダクション・モデルは来年末に公開予定だ。価格は、F-PACEの10%から15%増しとなると思われるが、実際の価格についてはジャガーは固く口を閉ざしている。もちろん、ライバルとなるのは、テスラ・モデルX、そしてメルセデスのEQだ。
I-PACEは、EV用の新しいアーキテクチャーを持つ。このエレクトリック・アーキテクチャーは、エレクトリック・スケートボードというあだ名が付けられ、既に生産に移行する準備がされているという。その基本は現行のジャガーと同様、アルミニウムを主体としたものだ。バッテリー・パックのハウジングは材料からJLR製で、ボディ・ストラクチャーの一部をなす構造だ。
その駆動は、2つの同期型永久磁石モーターによるもので、前後それぞれのアクスルに1個ずつ搭載し、それぞれのアクスルを駆動する。組み合わせられるトランスミッションはシングルスピードだ。当然ながらモーターは、2本のアクスルの間で、トルクを即座にコントロールする。
モーターの出力は、それぞれ200ps。合計で400ps、トルクは71.5kg−mだ。パフォーマンスは、0-96km/h加速が4.0秒だとアナウンスされている。
JLRのビークル・ライン・ディレクターであるイアン・ホーバンは、「EVはギアシフトもなく、遅れのないレスポンスが特徴だ。」と語っている。「内燃機関に比べて優れたトルク・デリバリーは、いままでのドライビング・エクスペリエンスを大きく変えるものとなる。」とコメントしている。
ニュー・ヨーロピアン・ドライビング・サイクルの測定方法で、航続距離は500km。90分間のチャージで全体の80%充電可能で、2時間でフル充電が可能だという。チャージ・ソケットは、クルマのフロント・ウイングに埋め込まれる。
今回、ジャガーのエンジニアは、モーターの小型化と効率のため、社内でモーターを設計し開発した。モーターは234mmの外径、長さ500mmで、重さは38kgだ。効率が良く、重さの面でも有利なため、テスラのような誘電モーターではなく同期型永久磁石モーターが採用されたという。
バッテリーは90kWh。セルは36のポーチ・セルを使用した。ポーチ型セルを利用したのは、低い温度でも性能が発揮できることと、将来性が見込まれること、そしてより大きなものも、より小さいものにも対応が可能という理由からだ。
バッテリーの冷却は、専用の2モード・クーリング回路で行なわれる。適切な周辺温度であれば、ラジエーターのみでの冷却となる。より高い温度が発生した場合は、エア・コンディショニング・システムが動作し、冷却補助をするという。
ジャガーはI-PACEが、そのハンドリング、乗り心地、リファインメントについてクラス・トップであると確信している。サスペンションは、F-PACEで定評のあるフロントがダブル・ウィッシュボーン、リアがインテグラル・リンクを採用した。アクスルの間にバッテリー・パックを搭載するが、重たいものを低い位置に搭載することによって、重心が低くなると共に、フロントとリアの荷重はほぼ50:50になっているという。
コンセプト・モデルは、23インチのホイールと、265/35R23のタイヤがセットされる。
JLRのビークル・インテジリティ担当エンジニア責任者であるマイク・クロスは「これは本物のジャガーだ。運転するのが好きな熱心なドライバーのために開発された最初のEVだ。」とコメントしている。
4輪駆動システムには、ジャガーお得意のオール・サーフェス・プログレス・コントロール(ASPC)と、アダプティブ・サーフェス・レスポンス(AdSR)を備える。また、EVならではで回生エネルギーを調節することも可能だ。
I-PACEのボディ・サイズは、全長4680mm、全幅1890mm、全高1560mmとF-PACEよりも若干小さい。しかし、特徴的なのはそのホイールベースで、F-PACEの2894mmよりも長い2990mmというサイズを持つ。これはXFと較べても30mm長い。
ドラッグを減らすために、ドア・ハンドルはボディと面一で、サイド・スカートは効率的にホイールハウスまわりに空気を流すようになっている。Cd値は0.29だという。これに対し、テスラ・モデルXのCd値は0.24だ。
インテリアはEVらしい造りだ。その最たるものが、フロント・シートの間にあいたスペースで、ここに8ℓの収納スペースを確保している。スイッチ類はセンター・コンソールにまとめられ、ドライビング・シートは、その低重心に合わせてスポーツカーなみに低くなっているという。
ブート・スペースは530ℓ。これにフロントのフード下にも28ℓの収納スペースを持つ。
ジャガーは、従来のミッドサイズのSUVよりもI-PACEが小さいサイズであるにもかかわらず、フルサイズのSUVやラグジュアリー・サルーンなみのリア・パッセンジャー・スペースを確保したという。
コクピットは3つのディスプレイ・スクリーンを持つ全く新しいもの。メインは12.0インチのTFTタッチ・スクリーンで、インフォテインメント・システムとエアコンはアルミ製の回転コントローラーで動かされるそれぞれ5.5インチのスクリーンに集約される。また、12.0インチのバーチャル・クラスター・ヘッドアップ・ディスプレイも装備される。
インフォテインメント・システムは、ジャガーのInControlタッチ・プロ・システムを更に進化させたもので、スマートフォンとの連携も行える。