ミッドエンジンのポルシェ911RSRを公開

公開 : 2016.11.17 06:50  更新 : 2017.06.01 00:33

ポルシェは2017年シーズンのル・マン24時間をはじめとるGTレースに参加するモデル、911RSRをロサンゼルス・モーターショーで公開した。この911RSRの最も大きなトピックは、エンジンが従来のリア・マウントでなく、ミドシップ・マウントとなったこと。つまり、リア・アクスルより前方に4ℓのフラット6が搭載されたことにある。911のスタイルを保持しながらも、その中身は従来911とは異なったものになったということだ。

ポルシェ・モータースポーツの責任者であるフランク・シュテファン・バリサーが「911特有のデザインを維持しながら、GTのトップモデルとして史上最高の進化を遂げている。」と語っている通り、サスペンション、ボディ構造、エアロダイナミクス・コンセプト、エンジン、およびトランスミッションがゼロから設計されたモデル。エンジンが前方に移動したことによって、特に大型のリア・ディフューザーの取り付けが可能となり919ハイブリッドから採用したトップ・マウント・リア・ウイングとの組み合わせで、ダウンフォースとエアロダイナミクスの効率性が大幅に改善したという。

「911 RSRのために、私達は意図的に、特に軽量な最新の自然吸気エンジンに焦点を合わせた。これが車両の開発においてエンジニアに大きな自由を与えることとなった。新しいLM-GTE規定は、ターボ・エンジンと自然吸気エンジンのトルク特性が一致するなど、原則として多彩なドライブ・コンセプトが完全に平等となるレギュレーションだ。」とバリサーはコメントしている。新しい自然吸気エンジンは、リストリクターのサイズに応じて約375kW(510PS)の最高出力を発生。ステアリング・ホイールのパドルシフトは、マグネシウム・ハウジングを備えた6速シーケンシャル・トランスミッションを作動して、310mm幅の後輪にトルクを伝える。911 GT3 Rと911 GT3 Cupに続き、911RSRも最新式水平対向6気筒エンジン・ファミリーを採用したことになる。これにより新世代エンジンへの転換が完了したこととなる。

911RSRは、最新のアシスタント・システムを備える最初のモデルでもある。911 RSRには、「コリジョン・アボイド・システム」と呼ばれるレーダー・サポートによる衝突警告システムが装備される。夜間でも、高速のLMPプロトタイプを早期に検知して接触を回避させることができる。

シートはシャシーに固定され、ペダルを動かして調節し、ドライバーに適合させるタイプだ。

メンテナンス性が大幅に向上されたのも特徴のひとつ。インテリジェントなクリック・リリース・ファスナーによって、カーボンファイバー・ボディのエレメント全体を短時間で完全に交換することができるという。さらに、サスペンション・セットアップの変更をより簡単迅速に行うことがでる。

911 RSRは、2017年1月にIMSA開幕戦であるデイトナ24時間レースでデビューを果たすし、その後、140時間以上のレースに匹敵する19のレースに出走が予定されている。2台のファクトリー・エントリーが、ル・マン24時間を含むFIA世界耐久選手権(WEC)と、米国のIMSAに参戦する。

エンジン
水冷式6気筒水平対向エンジン(ミドシップレイアウト)、排気量:4,000 cc、ストローク:81.5 mm、ボア:102 mm、最高出力:約375 kw(510 PS)(リストリクターの設定によって調節)、4バルブヘッド、ダイレクト・フューエル・インジェクション(DFI)、ドライサンプ潤滑システム、シングルマスフライホイール、リストリクターによる出力制限、電子制御スロットル

トランスミッション
コンスタントメッシュ式6速シーケンシャルトランスミッション、ベベルギアを採用した前後方向のツインシャフトレイアウト、電子制御シフトアクチュエーター、ステアリングホイールに設けられたシフトパドル、マグネシウム製トランスミッションケース、ビスカスカップリングユニットを採用したマルチディスク式リアディファレンシャルロック、トリプルディスク方式のカーボン製レーシングクラッチ

ボディ
アルミニウムとスチールの組み合わせによって重量を最適化したシャシー、ルーフに設けられたリムーバブル方式のレスキューハッチ、ルーフに組み込まれたリフト用ブッシュ、FT3規定の燃料タンク(車両前方に配置)、溶接ロールケージ、FIA 8862-2009に準拠したシート、シャシーへのリジッドマウント、HANS対応6点式シートベルト、前後調節式ペダル、クイックチェンジが可能なCFRP製ボディ、“スワンネック”マウントを採用したリアウイング、4ポストエアジャッキシステム(安全プレッシャーバルブ付)、電子制御消火システム、ヒーター付フロンドウインドウ。

サスペンション
フロントアクスル:ダブルウィッシュボーンサスペンション、4-wayバイブレーション・ダンパー、ツインコイルスプリング(メインスプリングおよび補助スプリング)、ブレードポジションによって調節を行うスタビライザー、電動油圧式パワーステアリング
リアアクスル:サブフレームとダブルウィッシュボーンを採用したインテグレーテッドリアサスペンション、4-wayバイブレーション・ダンパー、ツインコイルスプリング(メインスプリングおよび補助スプリング)、ブレードポジションによって調節を行うスタビライザー、電動油圧式パワーステアリング、トライポッドドライブシャフト。

ブレーキ
バランスバーによって調節を行うフロントおよびリアの独立2系統ブレーキシステム。
フロントアクスル:クイックカップリングを採用したワンピース構造の6ピストン式アルミニウム製レーシングキャリパー、スチール製ベンチレーテッドディスク(直径:390 mm)、レース用ブレーキパッド、最適化されたブレーキ冷却ダクト。
リアアクスル:クイックカップリングを採用したワンピース構造の4ピストン式アルミニウム製レーシングキャリパー、スチール製ベンチレーテッドディスク(直径:355 mm)、レース用ブレーキパッド、最適化されたブレーキ冷却ダクト。

ホイール/タイヤ
フロントアクスル:ワンピース構造の鍛造軽合金ホイール(12.5Jx18、オフセット:25、センターロック式)、ミシュランスリックタイヤ (30/68-18)
リアアクスル:ワンピース構造の鍛造軽合金ホイール(13Jx18、オフセット:37、センターロック式)、ミシュランスリックタイヤ (31/71-18)。

エレクトリカルシステム
Cosworth(コスワース)製セントラルロガーユニット、CFRP製マルチファンクションステアリングホイール(ディスプレイ一体型)、シフトパドルおよびクイックリリース、衝突回避システム、充電制御型オルタネータ―およびLiFePo4バッテリー、LEDヘッドライト、LEDテールライトおよびレインライト、イルミネーション機能付カーナンバーおよびリーダーライトシステム、コックピット内のブラックライト、電動調節式ウイングミラー(メモリー機能付)、タイヤプレッシャー・モニタリングシステム(TPMS)、ドリンクシステム、エアコンディショニングシステム、センターコンソールのメンブレンスイッチパネル(蛍光ラベル付)。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事