ベストドライバーズカー選手権2016 / 一般道編
公開 : 2016.11.19 05:50 更新 : 2017.05.29 18:27
結果は、その通りだった。50mテスト、という言葉を使うメーカーが少なからずある。ドライバーがクルマから、手を、足を、目を、耳を通して受け取ったメッセージを、脳が理解するまでには50mほどの距離を要するというものだ。
そこで、自分が乗っているのがスペシャルなのか否か、わかりはじめるという。だがGT8の場合、その10分の1の距離でも素晴らしいことがわかる。
ただし、耳だけはふさがなくてはいけない。446psの4.7ℓV8エンジンが発するけたたましいノイズは、V8ヴァンテージのレース・マシン以上だ。2008年にそれでサーキットを戦った経験者が言うのだ、間違いない。
大排気量の自然吸気ユニットは風前の灯火だが、この4ユニットもたぶんに漏れず。来年登場が予想される新型ヴァンテージにはメルセデスAMG製のV8ツイン・ターボが搭載される見込みだ。
もしすべてのヴァンテージが、GT8のように本領を発揮する4.7ユニットを搭載していたら、そんなことにはならなかっただろうと惜しまれる。
ここで、採点ルールをおさらいしよう。公道とサーキットでテストを行い、1台のクルマにひとりのテスターが与えられる点数は、各ステージで25点まで。テスターは6人なので、1台あたりの得点は最高300点となる。
これは、ふだんわれわれが行うテストより不寛容だ。どれかがトップに、またどれかがビリになり、同点になるチャンスは少ない。
甲乙付けがたいフェイバリットカーを揃えたのだから、ランキングを確定するにはルールを厳しくする必要があるわけだ。
また、公道とサーキットで別々に採点することは、全開走行だけで評価することができない縛りを設けたということになる。
そこで、このアストンだ。
北ウェールズまでの道中では、これこそ最高の1台だった。シャシーもドライブトレインもソリッドで、エンジンはエネルギッシュでありながら、低回転域のスロットル・レスポンスも柔軟だ。
6速MTは、アンドリュー・フランケルいわく「ヒール&トウにこの上なく最適なペダル配置」で、しかもこのそうそうたるテスト車たちの中にあっても「ベストのハンドリング」と評した。
確かに、油圧アシストは豊富なインフォメーションを、ほぼ改変することなく伝えてくれる。公道上で乗るGT8は、圧倒的に夢中になれるクルマだ。これほど魅力に満ちたクルマが、それでも公道テストで150点満点中119点を得るに留まり、6位に甘んじたのである。この戦いの厳しさを、改めて思い知る結果となった。