ベストドライバーズカー選手権2016 / 一般道編
公開 : 2016.11.19 05:50 更新 : 2017.05.29 18:27
ステアリングは、油圧アシスト時代より希薄なフィールの問題を巧みに解決し、魅力的と思えるまでに磨かれていた。
「もはや批判しがたいね」とはフランケル。ほう、最大の欠点は大目に見ようという大人の対応か。「もちろん、エンジンは別だよ」。あ、言っちゃった……。
その清濁あわせ呑んだミドシップ・クーペにとって、もっとも厄介なのは、BMW M2だろう。
こちらは素晴らしい6気筒を搭載している。「エンジンとパフォーマンスの水準は最高だね。パンチの効いた、マニュアルでのギヤチェンジにも惚れるよ」というソーンダースの意見には、両手をあげて賛同できる。
シャシーの洗練性でケイマンに一歩譲るかもしれないが、回りくどいところのない、実に素直なFRクーペだ。
「ここから日々ともに過ごすクルマを選べ、って言われたら、たぶんM2に乗って帰るよ」というミュアーの気持ちは、きっと理解していただけるだろう。
公道テストである以上、そこがいかに空いていて見通しのよいコースでも、制限速度という厄介ものを無視するわけにはいかない。今回のようなクルマが揃っていては、なかなか難しい話だが。
そんななか、ジャガーF-タイプSVRは、グランドツアラーとして完璧な資質を示した。一般的にはむしろピュアな走りのクルマだと思われているが、少なくともここでは、スポーツカーとしてよりGTとしての成功が際立った。
「公道だけで投票するなら、たぶん上位に入るだろうな。ダンピングも、バランスも、優雅な乗り心地も、F-タイプRより上じゃないか」とはソーンダースの評価だ。
SVRの機械過給エンジンがR以上のスペックなのは周知の通りだが、シャシーの洗練度はいい意味で期待を裏切ってくれた。
ステアリングの素晴らしさもまたそうだ。ガッチリしていて、しかしインフォメーションはしっかり伝えてくれる。2トン近いGTカーながら、日常遣いする上でこれ以上のクルマはそうそうない。