ベストドライバーズカー選手権2016 / 一般道編
公開 : 2016.11.19 05:50 更新 : 2017.05.29 18:27
とはいえ、SVRの104点は、ホンダNSXの110点に、わずかばかり届かなかった。
ソーンダースは言う。「NSXに高得点を付けたくないのは、感傷的な理由だけだ。乗り心地がイマイチなのと、狭い道路ではいささか持て余す全幅は、まあ置いといて」
カケットは「頑丈で、ダイレクトで、乗り手を選ばない感じは、アウディR8みたいだ」と評するが、もしここにR8を持ってきても、NSXには歯が立たないだろう。ただし、それは公道上だけのことかもしれないが。
ここまで各車をざっと振り返ってきたが、残るは4台、それも公道上で許される速度域ではどうにも評価しがたい4台だ。マクラーレンの570Sと675LT、ポルシェ911R、そしてフェラーリ488GTBである。
まずマクラーレン570Sだが、NSXにすらパワーで及ばないにもかかわらず今回の顔ぶれに入っているのは、ハンドリングによるところが大きい。
市販車部門の歴史は短いマクラーレンだが、良識的な速度域で楽しめるクルマの造り方を覚えたようだ。
足回りに、上位機種のような凝ったメカニズムは備えず、ステアリング・アシストは電動ではなく油圧式。この使い慣れた技術で構成される570Sの走りは、実に堂々たるものだ。
「ステアリングは最高だ。この上なく精確でもある」とキャケットは絶賛し、ミュアーは「675LTより自信を持って攻めこめる。しかもずっと楽しい」とまで言った。
遅いモデルほどよかった、というのはありがちな話だが、570Sとて十分に速いクルマだ。
しかし、公道上では実に扱いやすい。フランケルが「サーキットより一般道のほうがいい」と評したこのクルマが、公道テストの2位を獲得したのは順当な結果だろう。
675LTとのわずかな点差は、決定的なスペックではなく、手応えや楽しさといった感覚的なものの違いによるものだ。
そして、ビッグネームふたつが残った。
ポルシェ911Rは、常に高評価を得るGT3に近い感覚だ。自然吸気ゆえに、絶対的な速さはないものの、全開にしたい気分に駆り立てられる。
これはフェラーリ488GTBにはない感覚だ。マラネロ謹製のターボ・ユニットはレスポンスに優れるが、公道上のスピード域であれば、どのギヤを選んでも極太のトルクでカバーできてしまう。
そんなわけで、一日がかりのテストを終えてのディナーでは、席上の話題は、ほぼポルシェとマクラーレンで占められることとなったのである。
サーキット・テストへとつづく。