低速域の乗り心地も実によい。18インチという(ハイパフォーマンス・モデルにしては)控えめなタイヤ・サイズが影響しているのもあるだろう。

可変レート・ステアリングは、高速域でスローになってくれるおかげで巡航が安定している。フォード・フォーカスRSというよりも、フォルクスワーゲン・ゴルフRのマナーに近い。

フォーカスRSはどちらかというと強烈さが売りであるが、S3はあくまで ‘日常の延長にある速さ’ を全面に感じる。フォーカスRSでクタクタになってしまった覚えがあるならば、むしろS3は安楽だと感じるのではないだろうか。

問題は、これをどう見るか? である。

エンジンはたしかにスムーズでパワフルなのだが、エキサイティングだと感じることはない。ステアリングを介して手元に伝わる感覚も、どこかひんやりとしている。

反面、タイトなコーナーの連続する峠道やサーキットだと、正確無比なマナーに驚くことになる。繰り返し乗れば、ソフトウェアの改変(=パワー配分のリア偏重)もよく理解できる。