ベストドライバーズカー選手権2016 / TOP3決定戦
公開 : 2016.11.26 05:50 更新 : 2017.05.29 18:27
さまざまなコンディション下で、488GTBは他を圧倒した。マクラーレンこそ居合わせなかったが、ポルシェ最高のドライビング・マシーンと目された911GT3RSを、このターボ付きフェラーリが降したことは、四半世紀を超えるこの企画の歴史においても一大事のひとつに数えられる。
そして、サーキット・テストでそれは証明された。再度、他車と同様にすべてのテスト項目をこなし、激しいパンチだけでなく、それを意のままに操れる点でも、信じがたいレベルにあることを思い知らせたのだ。
プライヤーなど、しばし言葉を失ったほど、それは驚異的だった。そしてなにやらブツブツとつぶやいているので、聞き耳を立ててみると「だって、3代目エスコートみたいに走れちまうんだぜ……」というようなことを繰り返していたのだ。
しかし、結果の扱いに苦労していたのは彼だけではない。なぜなら3台とも、タイヤ・グリップ限界を超えてからの驚くべき適応力を見せたからだ。
カケットは語る。「この3台の、乗りやすさやハンドリング限界を超えた際に背中を押してくれる感覚は、全車のなかでもトップ・クラスだ」
実際、フェラーリでサーキットを走ることへの気後れを忘れる瞬間が、488GTBのコクピットでは訪れる。
そして、この670psのミドシップ・フェラーリにしか到達し得ない、想像を超えた領域へドライバーを誘う。中速コーナーへオーバースピードで突っ込んでも、スロットルを残していればテールはゆるやかに滑りはじめる。
そのときに気付くだろう。今は荷重を制御したり、入力を熟考したり、はたまた静かに祈ったりしている場合ではない。エンジンにもっとガソリンを送り込み、カウンターを当て、次に備える。
そして、真っ当でなかろうが、信じられないレベルであろうが、お好みのアングルに達したらストレートに向け一気に突っ込むのが正解だと。最大の危機と思えた時間は、会心の笑みにかき消されるに違いない。
問題は、公道ではその究極の境地に至ることができないという事実だ。だからこそ、過酷な公道テストのコースで速さとイージーさを示しながらも、ベスト・パフォーマンスを見せられず、675LTや911Rより下に甘んじてしまったのだ。
欠点と思えるものは、フェラーリではおなじみの特性だ。それはステアリングに集中する。軽すぎるタッチ然り、過激なオフ・センター然り、競合に比べ希薄なフィードバック然り。これほどコミュニケーション能力に優れたシャシーはほかにないというのに、その才能が舵には備わっていないのが不思議でならない。