アウディS5

公開 : 2016.12.02 05:40  更新 : 2017.05.29 18:13

シャシーは、ほとんどのオーナーがこうあって欲しいと望むだろうことを、9割方は満たしている。ただし、根っからのエンターテナーではない。

オプションのスポーツ・ディファレンシャルを装備していたテスト車は、常にグリップは強力で、足取りは安定したものだったが、コーナリングで特別に魅力を感じることはなかった。

乗り心地は実にすばらしい。今回試乗した限りでは、A5のスポーツサスペンション装着車より上出来だった。確かに硬めではあるが、路面の凹凸を上手くいなしてくれるので、グランドツアラーとしても満足できる。

ただしそれは、オプションのアダプティブ・ダンパーあればこそ、かもしれない。コンフォート/オート/ダイナミックの3モード切り替えが可能だが、われわれの好みはダイナミック・モードだった。ボディ・コントロールはきめ細かくなり、それでいて振動や細かい揺れに妥協することもなかったからだ。

ただしコンフォート・モードでは当然ながらダンパーがソフトになるが、それが路面の不整を吸収するより、ボディのうねりにつながってしまう印象だった。

ダイナミック・ステアリングは相変わらず、ドライビングを楽しむ上では邪魔な存在でしかない。アシストの重さや操作に対する操舵量を調整する幅が広すぎて、ドライバーの感覚と実際の走りが乖離しすぎてしまうのだ。

例えば低速域ではよりダイレクトになるセッティングは、駐車時には重宝するかもしれないが、ジャンクションやラウンダバウトなど速度を落として通過するシチュエーションではトリッキーな挙動の元凶となる。

高速道路などを流す際には、確かにストレスを軽減してくれる。それでもわれわれとしては、その導入を決める前に、素のステアリングにも触れて比較することを強くおすすめしたい。

■「買い」か?

実用的で、パワフルで、スタイリッシュかつ派手すぎないちょっとスポーティな高級クーペ。そんなクルマをお探しなら、ここに納得できる物件がある。しかし、日々ドライバーを夢中にさせてくれるクルマが欲しいなら、よそを当たってもらわなければならない。

ハンドリングはナチュラルさやバランス、気持ちよさといった点で競合車に到底敵わない。その乗り心地は熟練の仕上がりを見せ、天候を問わぬ安定性も備えるが、それらと刺激溢れる魅力的なハンドリングを兼ね備えるライバルも存在する。

アウディは今後、Sモデルの開発に今まで以上の努力を強いられるだろう。もちろん、メルセデスAMGが ‘43’ のバッジを与えて市場に送り込んだセカンドラインに対抗するためだ。

それを成し遂げた暁には、80年代を風靡したアウディ・クワトロの、真の後継者が誕生することだろう。ただしそれは、現時点ではまだ夢物語に過ぎない。

■日本版編集部の見立て

メルセデスのAMG 43シリーズに対抗するモデルとなったSシリーズ。AMG 63にはその上のRSを当てるということになる。ベース・モデルのA5対Cクラスは、Cクラスに分があるようだが、この対決はS5は健闘しているようだ。A4/A5 vs Cクラスの戦いは長い。


アウディS5

価格 £47,000(673万円)
全長×全幅×全高 NA
最高速度 249km/h
0-100km/h加速 4.7秒
燃費 13.5km/ℓ
CO2排出量 170g/km
乾燥重量 1615kg
エンジン V型6気筒2995ccターボ・ガソリン
最高出力 354ps/5400rpm
最大トルク 51.0kg-m/1370rpm
ギアボックス 8速オートマティック


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