TT RSはシャシーのハードさやパワー・デリバリーのフラットさ、そしてダイレクトさで、A45とフォーカスRSを凌ぐが、コーナリングでのバランスはそうではない。ステアリングはロック・トゥ・ロック2回転。ターン・インでは大きく切らなくてもよいが、エイペックスを正確に捉えるのは難しい。

そして最大の問題は、ステアリングのフィードバックの欠落だが、これは予期できなかったことではない。絶縁されたようなフィールとしつけられた挙動は、アウディの速いモデルに共通する要素である。

とはいえ、50kg-m近いトルクと前輪駆動ベースのドライブトレインで走っていて、トルク・ステアの兆候すら見せないというのは不気味ですらある。バンプ・ステアや、ハードなサスペンションに対しても同様だ。その点、フォーカスRSは極めて対照的で、操舵と走行ラインの関係も、駆動輪に引っ張られる感触もダイレクトだ。

多分アウディは、マッハ2くらい出るとしても、コンビニに買い物に行くペースと変わらないイージー・ドライブが可能だろうが、フォードではドライバーの限界まで集中力を要求する。しかしながら、TT RSは悲しいまでにコミュニケーション能力が不足している。そして大きなバンプに遭うと、脚の硬さを思い知らされる。フォーカスRSなら、感情むき出しといった走りで猟犬のように道路に追従し、ドライバーを疲労させるところだ。

これがA45となると、実に巧みなバランス感覚を見せる。ステアリングは過剰でないダイレクト感で、適度な操舵力と豊富なフィールとを両立。サスペンションはボディの不要な動きを止める硬さを持ちながら、路面の不快な凹凸を吸収する余裕もある。

ロールの制御も、グリップに貢献する程度には残しつつ、走りに悪影響を与えるレベルのそれはしっかり食い止める。ハンドリングはゆるやかに推移し、予測が付きやすく、なにより精確だが、それらはこうしたハイ・パワーなクルマを、尻込みせず自信を持って運転するためには欠かせない要素だ。この3台を比較すれば、公道上ではAMGがひときわ輝いて見える。