マツダ雪上試乗会
公開 : 2016.12.28 05:50 更新 : 2017.05.29 19:12
実はGVCは前記の「減速を伴う転舵」を自動的に行うシステム。正確には転舵(舵角増)開始直後の超短時間のエンブレなのだが、それだけでラインコントロールの操舵追従性が改善されている。
サスペンションや転舵機構周りには衝撃吸収や滑らかな動きのために取り付け部や関節のブッシュや隙間などの「緩み」がある。これが操舵応答遅れの原因のひとつ。しかも、駆動力が掛かった状態では「緩み」は転舵時と逆側に寄っているので応答遅れは助長される。この「緩み」を取るのが減速操作である。
GVCが行うのは転舵時の1気筒1回分のエンブレ。舵角変化は1000分の1秒単位で検知されるので、人間の感覚では認知できない領域で減速による緩み取りを行っている。そこで「ピローボールとか金属ブッシュで組んだらGVCは不要なのでは?」と開発者に尋ねてみると、「振動騒音はともかく、GVCの効果はほとんどないでしょうね。」とのこと。言い方を換えるならGVCは操舵応答性だけをピロ足のように向上させているわけだ。
また、減速から入るコーナリングあるいはコーナリング中に減速でラインを絞る時はGVCは介入しない。転舵あるいはラインを絞る時に減速から入るのはコーナリングのセオリーのひとつであり、セオリーに則った運転をしていればGVCは不要である。
しかし、正しい運転をしていてもアクセル開度を維持あるいは踏み込んだ状態での転舵を行う状況もある。高速巡航時のコーナリングや車線変更、登坂のコーナリングなどである。路面凹凸や横風による外乱の補正操舵も同様だ。このような状況で転舵の度に減速していたのでは不要加減速で乗り心地も燃費も悪化する。
ところがGVCはこのような状況で思い通りの滑らかなコントロール性を発揮する。とくに圧雪の荒れた路面での落ち着いた直進性はありがたい。直進でGVC効果というのも奇妙に思えるかもしれないが、実際には路面凹凸の微妙なキックバックで舵角は安定せず、進路にもわずかな乱れが生じる。その修正舵にGVCが作用する。
上がGVCあり、下がGVCなしの場合のハンドリング裁き。上のGVCありの場合、ステアリングの追う舵や戻し舵が少なくなっていることがわかる。微妙な違いだが、これが最終的な疲れ軽減などに寄与する。