‘おいしいグレード’ 決定戦 ーー マクラーレン570GT & ゴルフGTIクラブスポーツS & メルセデスE350dエステート
公開 : 2017.01.08 05:50 更新 : 2017.05.29 19:10
‘敢えて’ しなやかで控えめなのは、あのサーキットが理由だった?
310psまでパワー・アップしたゴルフGTIで、しかも左ハンドルだが、扱いにくいというほどのことはなく、なによりこのクラブスポーツSは、個人的にも今年のお気に入りに数えられるクルマだ。
テスト車両のシリアルナンバーは000/400で、8月のロードテストと同じ個体だ。ただし、以前はサーキット重視のミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2だったが、今回はピレリPゼロ。路面が2cmほど冠水していても、山頂から全開で駆け下りてくるような走りをしなければ、実にいい仕事をしてくれる。
こうした路面では、一般的にタイヤなど何を履いても変わらないものだが、ことクラブスポーツSの場合は、今回のチョイスがクルマの良さを際立たせてくれた。
2.0ℓ直4ターボは、四輪駆動のゴルフRすら凌ぐパワーを前輪のみに送りつけるが、走り出すとトルクステアがほぼないことに驚かされる。また、わざとホイールスピンさせても、220psのノーマルGTIと変わらず扱えるのだ。
アルミ・サブフレームの採用などの改良を受けたフロントのおかげで印象は良い。しかし、もちろんそれはクラブスポーツSのほんの一面。このホットハッチは、断片的に輝きを見せるだけでなく、日々の移動でさえ楽しく、しかもイージーなクルマなのである。
そうして5時間ほどをこのVWの運転席で過ごしたが、峠道で光るものがあるだけでなく、幹線道路ではこれまでのどんな高性能版ゴルフにもなかった穏やかで快いマナーを見せる。
それは、このクルマに施された、ある目的のためのセッティングがもたらすものだ。
ニュルブルクリンクでの市販FF最速タイム樹立である。極限までチューンされたエンジンも、しなやかなサスペンションやステアリングも、ノルドシュライフェを制することが至上命題なのだ。
そうして得たエンジン・パワーとコントロールのしやすさが、驚くほどウェールズのワインディングにフィットした。
また、同様の目的でルノーが仕立てたメガーヌ・カップSとはまったく異なり、より柔軟で、過敏ではなく、おそらく多少なりとも速いものになったのもまた興味深い。
結果的に11時間ほど運転したが、そのあいだ、英国に150人のみとなるオーナーに仲間入りできなかったことが悔やまれっぱなしだった。それほどまでに、このクルマはすばらしかった。