‘おいしいグレード’ 決定戦 ーー マクラーレン570GT & ゴルフGTIクラブスポーツS & メルセデスE350dエステート
公開 : 2017.01.08 05:50 更新 : 2017.05.29 19:10
‘おいしいグレード’ その3、メルセデス・ベンツE350dエステート
残る道程はせいぜい80kmほど。しかし1車線の道がひたすら続くコースでは、高速道路のよう進むことはできない。
しかも、タウィ川沿いの土手に沿ったアップダウンの激しいこのルートは、Eクラスの高精細なワイド・モニターを備えるナビでやっと見つけられるほど細く、表示される村々の名前は、地元の住人か、さもなくは妖精語の使い手でもなければ読めないようなスペルばかりだ。
速度計が50km/hを超えることは滅多にない。見切りが悪く、そこここで生け垣の横に停められた三菱やいすゞのピックアップに遭遇するし、さらには前日の暴風雨の影響で、路上に石や小枝、時には薪になりそうな木などが散らばっているのだ。
申し遅れたが、ここからのレポートはわたし、マット・ソーンダースが担当する。というのも、プライアーは道幅いっぱいを占めるほどのマクラーレンを駆るのに四苦八苦して、とてもじゃないが状況を記録する余裕などなかったからだ。
彼は問題ないと言っていたが、見栄を張っているようにしか見えなかった。自分がその立場にあったなら、障害物の数々を避けるので精一杯だっただろうし、もっとそれらに影響を受けにくいクルマを望んだだろう。
その点、E350dエステートは安心して走れる万能選手で、必要とあれば倒木が道をふさいでいる場合に備えて、バッテリー駆動のチェーンソーを積んでおけるだけの荷室も持ちあわせている。
車種選定の段階で、他のふたりは、退屈なメルセデスなどを持ちだしたわたしに謝罪要求でもしそうな顔をしていた。しかし、ウェールズの悪天候の中では、ふたりとも表には出さないながらも、自分の選択を後悔しているに違いない。そして、メルセデスが仲間にいることを、内心では喜んでいるはずだ。
なにしろ、彼らの荷物や撮影機材を積み、さらに取材の合間のひさしを貸してもまだスペースがあまっているのだから ‘退屈さまさま’ ではないか。
昨年も数多くのクルマに試乗したが、そんな中でも自分で所有することを想定できるものと、とてもじゃないが夢のまた夢というもの、もしくは間違っても買わないようなものがある。