‘風を切るクルマ’ 決定戦 その1 ―― モーガン3ホイラー編
公開 : 2017.01.14 05:50 更新 : 2017.05.29 19:16
モーガン3ホイラー 地獄と天国のエクスタシー
かつてモーター誌という、われらがオートカーのライバル誌があった。のちに2誌は合併してオートカー&モーターとなり、現在はご存知の通りオートカーの名のみが残っているわけだが、この ‘モーター’ という言葉には ‘クルマでどこかへ行く’ という、‘ドライブ’ とほぼ同義ながらやや古風な意味合いもある。
わたしが、そして現代のドライバーたちが、日頃楽しんでいるのが、エアコンやインフォテイメント機器に囲まれた ‘ドライビング’ なら、3ホイラーでの走りは ‘モータリング’ と呼ぶのがふさわしいだろう。
あたたかい飲みものやサンドウィッチで空腹を満たすにも、地図でルートを確認するにもクルマを停める必要があり、そのたび風に乱れた防寒着の襟元を正し、裾を巻き付け直さねばならない。シート・ヒーターはあるものの、身体全体を暖めてくれるヒーターは備わっていないのだから。
幹線道路は、モーガンに最適の舞台ではなかったが、チェダーが近づくにつれ、このクルマが素敵なものに感じられるようになっていった。
2.0ℓのVツイン・エンジンはアイドリング時に、もはやシャシー剛性を語る気も起きないほどドライバーを盛大に揺さぶるが、都市部を抜け、チェダー渓谷を縫って走れば、周囲の岩肌に響くエンジン音は穏やかで、思わず笑みがこぼれてしまう。