まさかの天候悪化　意識が薄らいできた

天候は悪化し、十分な前方視界を得るにはフロントスクリーンの陰に入るよう身をかがめなければならないほどだったからだ。道は空いていたが、この状況ではスピードは出せても100km/hがせいぜいだった。

また剥き出しのコクピットで刺激されるのは、視覚や聴覚、触覚だけではない。嗅覚、すなわち鼻の穴にも、様々な情報が飛び込んでくる。

焼けたタイヤ、ガソリン、熱い排気、田園地帯ならば ‘田舎の香水’ も……。時折、なぜかモーターの焼けるようなにおいも混じる。朝風呂派のひとも、これに乗るようになれば帰宅後にゆっくり入浴するようになるだろう。

3ホイラーは、ロマンティックであり、感動的であり、要するに夢中になれるクルマだ。そんな思いに浸り、ついでに湯を張った湯船にものんびり浸りたい気分で差し掛かった有料道路で、この日最後の衝撃が待ちかまえていた。

3ホイラーをバイクと思った料金所の係員が「バイクは無料です」というのだ。危うく「なかなかにクレイジーですね」と言ってしまうところだった。自分のことを棚に上げて。