ランボルギーニ・アヴェンタドールS
公開 : 2017.01.25 05:40 更新 : 2017.05.29 19:21
バレンシアを拠点に行われたジャーナリスト向けの試乗会は、ランボルギーニの思惑を台無しにするものだった。
10年に1度という大きな嵐のなか、730psのクルマを並べるために用意された場所は水没した広場。カモがいたら泳いでいただろう。それに会場への道中も良いコンディションとは言えず、山道は雪により通行止めとなっていた。
サーキットがオープンしても、試乗会はインストラクターによって厳密にコントロールされ、このペースでは全員が新しいSを体験する前にイベントが終わってしまうと危惧するほどスロー・ペースであった。
LP700-4から引き継いでいるストラーダ・モードを選択すると驚くほどに重ったるい印象を受けた。
その理由のひとつとして、競合他社のトレンドに反して、今なおシングル・クラッチに固執していることが挙げられる。エンジニアは、デュアル・クラッチより軽く済むことを主張するかもしれないが、やはり、このような速度域では最良の選択肢とは言いがたい。もちろん、より激しいモードでは、いずれのギアでもかなりの切れ味と味わいであることは、われわれが保証するのだが。
ウェット路面のスポーツ・モードは比べ物にならないくらいエキサイティングになる。前後40:60という安定志向のストラーダ・モードに比べて、最大でトルクの90%がリアに送られるため、ポンとアクセルを踏みこめば、自分の意図通りに、すいとリアがスライドしはじめる。
このへんから四輪操舵システムの真の実力が明らかになる。「あれ? アヴェンタドールってこんなに鋭い動きをするクルマだったかな?」といった感じなのだ。
ストラーダ・モードだと、スタビリティ・コントロールの介入が(もちろんいい意味で)甘くなる。滑りやすいコンディションでも御しやすいのもよい。
さらにコルサにすれば、文字どおり無慈悲なシフト・マナーに一変。ついうっかりすると、アヴェンタドールは暴れ始める。恐怖心とスレスレの感覚で、このモードならば、最大80%のトルクがリアに流れこむ。数字だけでもスリリングだ。コーナーを抜けるまで徹底してアンダーステアだが、脱出時のフロントの力強い引っぱりを考えると、ひょっとするとドライ路面には適したモードなのかもしれない。
そしてエゴ・モード。名前の目新しさがひとり歩きしているが、実のところステアリング、パワートレイン、そしてサスペンションを任意で自分好みに設定できるというもの。ただでさえ刺激的なアヴェンタドールを好みに設定できるのは、言うまでもなく嬉しいことである。