‘いま旬のセダン’ 決定戦 ーー アルファ・ロメオ・ジュリア vs BMW 3シリーズ vs ジャガーXE
公開 : 2017.02.04 05:50 更新 : 2017.05.29 19:29
あれ? アルファ・ロメオ・ジュリアが優勝するのか?
‘総じていいクルマだ’ という漠然とした感覚ではなく、初見で各部を的確に評価できるほど、長所をはっきり示した。
まずハンドリングだが、正直これは期待していなかった。というのも、非常に軽くて、不意にレスポンスが立ち上がるとの前評判を耳にしていたからだ。
しかし、それに馴染むのに時間はかからなかった。
たしかに手応えは軽く、それはBMWやジャガーのあとではなおさら頼りない。しかし、しっかりと芯があるフィールで、電動アシストにありがちな空虚さに苛立たされることはない。信頼性と確実性のある進路変更が行えて、入力に対する同調ぶりも繊細だ。
乗り心地は概ね良好。アルファ・ロメオのハッチバックは洗練度が低いが、ジュリアはバンプへの対処の熟慮ぶりや落ち着きが感じられる。
たしかに硬いものの、オプションの18インチ・ラン・フラットを履いてさえ、このセグメントとしては非常に高い柔軟性を示す。各輪から高速道路上の路面変化さえ伝わってくるが、非常に剛性の高い構造体に包まれたキャビンを不快にするほどは振動しない。
もちろん、320dとXEも快適で、極めて静粛性が高い。XEについては、ホイール・コントロールも実に巧みだ。しかし、レディングからスウィンドン、ブリストルへと歩を進めても、走り始めに感じたジュリアへの興味が削がれることはなかった。
アルファ・ロメオの新しい2.2ℓマルチジェット・ディーゼルも興味深い。試乗車に積まれていたのは、よりパワフルな180ps仕様だ。今回の3台の中で、ジュリアがもっとも速いクルマであるのは間違いない。オール・アルミのディーゼル・ユニットが生む最大トルクは他を上回り、8段ATは多少ながらより積極的にシフト・ダウンするようプログラムされている印象だ。4WDの2台より165kgも軽いという点もアドバンテージである。
隊列はブレコン・ビーコンズ国立公園内を走る、B4560線に入った。この曲がりくねった道は、320dにピッタリだ。ステアリングは精確で、狙ったポイントへ向かって、車体中心を軸にしたように曲がっていく。敢えて挑まなくとも、当たり前のように見せる活発な走りは、典型的な走り屋ユーザー向けのクルマであるかのようだ。
しかし、より丹念に検討すれば、コーナーで190psの2.0ℓユニットの回転を上げるたびに味わう運動性に、深い満足感を得られる。駆動力配分をリア寄りとした4WDシステムを備えるシャシーは、ジュリアほど俊敏ではないものの、大胆な入力もしっかりと受け止め、ビスカス・カップリングの働きで爽快かつ甘美な走りを実現する。
いっぽう、XEのボディの動きは320dより堂々たるもので、3台の中ではもっとも穏やかだ。上屋の揺れの振幅を感じているうちにスッと向きを変えるが、その揺れはいつまでも続くことなく収束する。
操作系の重さは巧みに調整され、ドライバーは力を入れていることを半ば忘れるほどだ。ステアリングにBMWのような重さやアルファ・ロメオのようなレスポンスはなく、ドライバーの意識に強く割り込んでは来ない。ただステアリング・ホイールを回せば、クルマがそれについてくる、という感覚だ。
この味気なさは、四駆ゆえの重さと、BMWのエンジンほど回りたがらない180psの2.0ℓインジニウム・ユニットの責任だろう。しかしジャガーは、途切れることなく二駆を凌ぐトラクションと興味を引く程度のレスポンスをほどよくブレンドし、経験したものを魅了するであろうクルマに仕上げている。