気候変動問題にまったく関心のないドナルド・トランプが今後の自動車産業にもたらす影響とは
公開 : 2017.02.10 11:07 更新 : 2017.06.01 00:30
ドナルド・トランプ政権がスタートして4週間がたった。彼のエネルギー政策は、今後の自動車産業にどのような影響を与えるのだろう。
ドナルド・トランプの政策、とりわけ自動車産業と環境問題についてわれわれは触れておかねばならないだろう。
新しいアメリカ大統領は、ホワイトハウスのウェブ・サイトから “気候” 関連のセクションを削除した。彼のアメリカの将来のエネルギー政策は、バラク・オバマとは異なるもので、自動車産業に与える影響も広範囲になる。
オバマ政権は、気候変動の影響を考えると共に、国際的な協力によって気候変動を防ぐというクライメイト・アクション・プラン(気候行動計画)を推進していた。しかし、そのウェブ・ページは現在はテレビの放映テスト・パターンのように何もない状態だ。
トランプ大統領は、クライメイト・アクション・プランのような有害で不必要な方針は削除すると明言しおり、彼は、気候問題よりも、空気や水を保護するためのクリーンな石炭技術を重要視するよう環境保護局に命じている。
トランプのエネルギー政策は、気候変動に対処するよりも、利益、それもアメリカのための利益を生み出すために集中しているようだ。
「われわれはエネルギー産業に課せられた規制を解除していきたい。」とトランプ大統領はコメントしている。
「これらの規制を解除することによって、アメリカの雇用を活発化することになる。規制がなければ、アメリカの労働者に支払われる賃金は7年間で$300億(3兆4000億円)ほど増加する。そして、埋蔵量が$50兆(5750兆円)にも上るシェール・ガス、石油、そして天然ガスを大いに有効活用しなければならない。」と語った。
この発言が自動車産業に与える影響とはどんなものだろうか。
トランプ政権は、すでに主要な自動車メーカーとの交渉で、新しい工場をアメリカ本土に建設することが望ましいと恫喝し、その結果、アメリカの株価は上昇した。
環境問題が一切関係しないのであれば、私の同僚は冗談でなく「すべてのエンジンがV8になる」と語っていた。
しかし、それは現実的な話題だろうか。
すでにV8を望むアメリカ人の多くは、V8エンジンを搭載したクルマを手に入れているからだ。と同時に、だからと言って他のアメリカ人が2.0ℓガソリン・エンジンよりも1.6ℓディーゼルを選ぶというわけではない。
また、今のところカリフォルニア州だけだが、独自のエミッション規制を行う権利を各州は有している。
トランプ政権の保護貿易政策が、アメリカの自動車産業にいくばくかの影響、つまりアメリカでの自動車の生産が短期的に上がることにつながるかもしれないが、自動車産業が抱える環境問題は、一国のリーダーの力でどうこうできるものではない大きな問題であるのだ。
自動車メーカーが新車を開発するにはおよそ3〜4年かかる。そしてこのクルマはその後7〜8年の間生産される。また、そのバリエーションを含めると更にその期間は長いものとなろう。そして、既に開発が進められている新しいモデルは、トランプの環境政策と真っ向から戦う、環境問題に配慮したモデルでもある。
もし、あなたが、CO2もNOxも発生しないエンジンが開発できるエンジニアであれば、あなたが世界を牛耳ることができるだろう。
それは別としても、気候変動や、温室ガス効果に対する自動車産業のアプローチは、合衆国第45代大統領の任期よりも遥かに長い期間にわたって行われており、この大統領の任期が終わっても対峙しなければならない問題であり続けているのだ。