プリウスPHVの挑戦、既視感からの脱却 ただし問題は山積み

公開 : 2017.02.15 00:00  更新 : 2021.01.28 18:21

確かにこれはよくできたクルマだ。それも、非常に巧妙な要素をいくつも備えている。たとえば、オプションのソーラー・ルーフだが、その電力を換気システムで消費した先代とは異なり、駆動用バッテリーを充電できるようになった。車載の太陽光発電デバイスが駆動用バッテリーを充電するのは世界初で、その発電量は一週間かそこらで容量の90%を満たせるという。

しかし、それらすべてを勘案しても、PHV版プリウスが真に、ハイブリッドカーの歴史の正当な番人だというトヨタの評価を再び輝かせる存在だとは思えない。要するにこのクルマは、4代目プリウスの改修版にすぎないのだ。

両手に持った標準モデルと燃料電池車のミライとをくっつけたようなイメージやディテールと、大幅に手を入れた電動パワートレインを組み合わせたわけで、発明という段階には達していない。

リチウムイオン・バッテリーは、容量が通常のプリウスの2倍で、寸法も重量も大きいが、設置場所はサイズも容量も小さい通常版と同じ荷室の床下だ。また、充電器やコンバーターも性能向上しているが、レイアウトは基本的にプリウスのそれだ。

と、実質的には改良されたプリウスなのだが、実走性能やドライバビリティは大きく引き上げていると、トヨタでは主張する。

それに寄与するのが、新採用のデュアル・モーター・ドライブ・システムだ。これはエンジンとジェネレーター用モーターの間にワンウェイ・クラッチを取り付けたもので、従来ならEV走行中に抽出できなかった駆動トルクを利用する。

結果、EVモードでのモーター出力は、従来の72psに31psがプラスされた。

これに352Vの新型リチウムイオン・バッテリーが相まって、EVモードの最高速度は135km/hに到達し、航続距離は60kmを超えるという。

ただし、エンジン+モーターのシステム出力は通常のプリウスと変わらない122psで、0-100km/h加速も11.1秒とほぼ同等だ。価格が4割ほど高いことを考えると、これは物足りない。また、同程度の金額で買えるBMW330eが252psで、6.1秒で100km/hに達することに照らせば、かなり見劣りする。

もっとも、プリウス・プラグインで評価すべきはパワーやスピードではない。CO2排出量は22g/kmで、信じがたいことだが、EV走行も含めた燃費は100km/ℓを超えることも可能だというのだ。

これには、消費電力を抑えるヒートポンプ式エアコンや、低温時のEV走行性能を高めるバッテリー昇温システムも貢献している。

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