GMからPSAへのオペル、ヴォグゾールの売却はジュネーブの前に決着か
公開 : 2017.02.17 15:27 更新 : 2017.06.01 00:29
上級取締役には知らされなかった買収話
GMとPSAによるオペル、ヴォグゾールの買収話について、オペルの上級取締役すらその話を知らされてなかったことが、ドイツの週刊誌、デア・シュピーゲルの取材で明らかになった。
オペルとヴォグゾールは、アメリカのGMのヨーロッパ部門を担う部門である。にも関わらず、オペルのボス、カール・トーマス・ノイマンを除く取締役は、このニュースに関して火曜の朝までこのニュースを知らされていなかったのだという。ノイマンも、先週後半に交渉については知らされたが、それがオペル、ヴォグゾールをPSAに売却するものだとは知らされてなかったようだ。
つまり、GMはオペルを蚊帳の外においたまま、PSAとの交渉に当たっていたのだという。
GMのCEO、メアリー・バーラは、オペルの取締役と話すために、一昨日ドイツに旅立った。バーラからオペル、ヴォグゾールの従業員に宛てた手紙には、GMがオペル、ヴォグゾールを売却する可能性があると記してあった。また、PSAとオペル、ヴォグゾールが変化の激しいヨーロッパ市場で生き残るために、互いに利益を確実にすることを尊重したい、ともあった。
PSAとオペルの間で行われた交渉は
今週火曜日に行われた交渉では、GMのヨーロッパにおけるサブブランドであるオペルとヴォグゾールがヨーロッパの自動車産業に与える影響を中心に話し合われたという。PSAはGMと直接話したことは認めているが、その内容がどこまで進んでいるかは発表していない。
PSAのステートメントでは、「PSAグループは、GMと共に収益性や事業効率を改善することをめざしている。オペル、ヴォグゾールの買収も含み、あらゆる戦略を考え、調査しているが、この件について合意がなされるという保証は現時点ではない。」と語っている。
また、GMは「2012年以降、GMとPSAは現在までヨーロッパで3つのプロジェクトを実行し、そのうち2つは大きな成功を収めてきた。このフレームワークの範囲内で、GMとPSAは更なる事業拡大と協力を続けていく。PSAとGMは収益性や事業効率の改善を目指しているが、その中にはオペル、ヴォグゾールの買収も検討課題に上っている。しかし、この買収については、必ずしも合意が整うというわけではない。」とPSAと変わりない当たり障りのないコメントを残している。
自動車工業に詳しい関係者はAUTOCARに、PSAの中国でのパートナー、東豊が財政援助を含みこのオペル、ヴォグゾールの買収話に1枚咬むかもしれないと語っている。
また、世界的なコンサルタント会社であるエバーコアICIがドイツの日刊商業経済誌、ハンデルスブラットに、GMがPSAに退職金のために用意されている積立金、つまり年金資産を支払うことになるかもしれないと語っている。
PSAがオペル、ヴォグゾールを買収することのメリットは、PSAを240万台以上ヨーロッパ市場でクルマを販売し、シェアが16%となるヨーロッパで2番目に大きなメーカーになるということだ。ルノーを追い越し、フォルクスワーゲンに次ぐメーカーとなるのだ。
2016年のオペルの販売台数は979,427台、PSAグループは1,446,052台。これを合計すれば、昨年のルノーの販売台数、1,496,394台を大きく抜くことになる。
ヴォグゾールは1925年にGMの傘下となったメーカーだが、英国だけの販売にもかかわらずオペルの生産台数の1/5を販売してきた。しかし、売却話が本当になるとすれば、そのブランドの将来は非常に不安定だ。2009年、GMの財政危機の時にも議題に上り、結果的には却下されたが、オペル・ブランドへの一本化という話がある。もし、PSA傘下になれば、この話は再び俎上に上ることになろう。
GMヨーロッパの収益は改善せず
2009年の財政危機以来、GMヨーロッパは16年間赤字のままだ。GMは2016年に黒字に転換すると予測していたが、ユーロ離脱の影響でポンドの価値が下落したことによって、ヴォグゾールは2016年には$3億(341億円)の損失を生み、結果的にオペルの$2億5700万(292億円)の赤字に繋がった。
一方、PSAは2013年に破産の危機を迎えた。そのためこのフランスのメーカーは、25.6%の株式を、半分はフランス政府に、そして半分は中国の東豊に売却することになる。その後、間もなくPSAはいくつかのプラットフォームでオペルとの協業を始めている。これが、今回の買収話のきっかけのひとつになったという話もある。