ドライバーズSUV決定戦:後編 ―― アウディQ2 vs 日産ジュークNISMO RS vs ミニ・クーパーSカントリーマン
公開 : 2017.02.19 00:00 更新 : 2021.03.05 18:51
3台の ‘(唯一)期待できそうな’ 小型SUVを、ドライビング・プレジャーの観点で戦わせる今回のテスト。前半はジュークに不満を、Q2にほどよい好印象を抱いたわれわれは、まずは視線を内装に向ける。意外な結末にも注目。
インテリアに見る、それぞれのストラテジー
ミニらしいドライビング・ポジションは好印象だ。初試乗では、クロスオーバーとしては寝かせすぎで不便だと批判したが、ドライビング・プレジャーの観点で評価するならばシートや操作系のレイアウトとそのアジャストしやすさは好ましく見えてくる。
運転席をもっとも下げたポジションは、一般的なハッチバックよりも低い。ステアリング・ホイールはドライバー正面へほぼ垂直に据えられ、脚はかなりまっすぐに伸びることとなる。
逆に、カントリーマンの余裕ある頭上空間を利用して、座面を上げたうえで、身長190cm近い乗員が乗ることもできるが、その場合は操作系と正対する感覚が強まり、全方向の見通しに優れる典型的なクロスオーバーの運転姿勢が取れる。
一方のアウディはQ2のドライバーがそこまでシートを下げることを想定していないようだが、座面高以外は調整幅が十分にあり、ポジションは実に健全だ。
日産はグレード名にふさわしいバケット・シートを奢るが、喜ぶのはドアを開けて乗り込むまでの束の間で、ステアリング・コラムの前後調整やレッグ・ルームの余裕がジュークに備わっていないことを、すぐに思い知らされる。
長身のドライバーであれば終始、脚も背も縮こまったような窮屈さの中で運転しつつ、どういうポジションなら快適に過ごせるのか模索することになる。1980年代のコンパクトカーでもあるまいに。
ジュークNISMOへの不満はまだまだ続く
30年以上も逆行したようなノスタルジーは、居住性に留まらない。NISMO RSは、高価なダンパーに特有の粘っこくゆったりとした揺れを感じさせる乗り心地で、ステアリングのフィードバックはカントリーマン・クーパーSの倍ほども伝わってくる。
ライバルたちよりあからさまに、本気のパフォーマンスカーだと主張したがっているような印象だ。これを楽しむ場合、Q2ならバウンドが収まらず、クーパーSで走るのも渋りたいような、アンジュレーションのキツい田舎道に持っていくのがおすすめだ。
しかし、高速コーナーやジャンクション出口などが頻繁にあるようなシチュエーションだと、能力不足が露呈する。
エンジン・パワーに対して、フロントタイヤの横グリップとトラクションが必要量の半分ほどしかないのだ。そのため、3速キープで行けるような長めの高速コーナーを、標準的な路面μでさえ、スムースに抜けられない。
でありながら、舵を中立からずらそうとする路面からの入力や、コーナリング中に拾ったバンプなどを逃さない。ステアリング・ホイールを手の中で暴れさせる程度にはグリップがある点も始末に負えない。
ジュークのコーナリングは、ほぼ一定したアンダーステア傾向で、スロットルを踏み足せば不安定な挙動で路肩へと突き進んでいく。
結局、ドライバーに要求されるのは忍耐と、それに付きものの苛立ちだ。ドライバーズ・エイドがオンなら、ブーストをスムースにかけることと、ESPを目覚めさせないように注意することの間でバランスを取り続けなければならないのだから。
とはいえ、電子制御デバイスをカットすれば、ホイール・スピンやアンダーステア、トルク・ステアなどの悪癖が剥き出しになる。これもモンダイである。