ベントレー・ミュルザンヌ・スピードの「スピード」はの本質とは?
公開 : 2017.03.01 12:10 更新 : 2017.05.29 19:02
どれほど勢いよくコーナーに入っても、ミュルザンヌは前輪に重々しくもたれかかるばかりで、限界を超えれば盛大なアンダーステアに手を焼くことになるのだ。
当然ながら、100kg-mを優に超えるトルクを駆使すれば、オーバーステアに持ち込むことも可能だ。しかし、本当にそれを望むだろうか。そんなことをしようとは思わないだろう。
そう、ドライバーズカーか否か、などという疑問を蒸し返すことが間違いなのだ。
ステアリングもまた然りで、低速では重厚すぎる。ロールスロイス・ファントムのような、オイルのように滑らかで、軽く、精確なフィールが欲しかった。しかもファントムは、速度が上がれば重さもダイレクトさも増し、高速コーナーにも十分に流動的な対応ができるのだ。
ここで最大の問題が持ち上がってくる。
乗り心地に関してだ。スピードでもベース・モデルでも、ミュルザンヌは路面の状態にかかわらず乗員を平穏な環境に置くものであるべきクルマだが、英国の路上では、前後席とも満足の行くレベルではなかったのである。
確かにコンフォート・モードでは、路面の波打ちのような長いスパンの不整や、厄介な轍や盛り上がりなども意に介さないかの如くゆったりと踏み越えていく。
しかし、マンホールや鋭いえぐれに出くわすと、エアスプリングが底突きして予期せぬ振動や衝撃が発生するのだ。
標準状態であるベントレー・モードでは、路面のアンジュレーションや損傷部が感じ取れるようになる。そしてスポーツ・モードでは、ボディ・コントロールのわずかな改善と引き替えに、乗り心地はミュルザンヌに期待されるそれからさらに遠ざかり、市街地では、パタパタいう音や振動、やや落ち着きのない挙動が表れる。
誤解のないように言っておくが、ベントレー・ミュルザンヌ・スピードは堂々たる走りと乗り心地で、ほぼ誰もがハッピーになれるはずだ。
しかし、ロールスロイス・ファントムの現行モデルを走らせたことがあれば、その非凡なまでの優秀さにベントレーの浮遊感は追いついていないことがよくわかるだろう。まぁ、もちろん、上記はすべて英国の悪路における感想だから、ほかの国のひとはあまり気にする必要はないはずだが。
それ以外では、進歩が見られる部分も多い。