■どんな感じ?

エンジンをかけると、12気筒にしか成しえない、得も言われぬサウンドが響く。12気筒未満のエンジンがガサツに思えてしまうほど甘美なメロディだ。

いかにも精密な機械がバランスよく作動しているかのように、静かで信じられないほどなめらかに回り、通常の運転をする限りでは、その存在を意識することがないのも特長である。

スポーツ・モードを選択すると、状況は一転する。音色が変わり、音圧もやや高まる。逞しいが、押しつけがましくない唸りが車内へ響き始めるのだ。

サウンドの一部がスピーカーを通じて聞こえる合成音だということに抵抗があるかもしれないが、音じたいは古典的なV12のそれであり、人工的とは思えない。

ターボ・ラグを感じさせるアルピナB7のエンジンとは異なり、M760Liのそれはより応答性が良く、さらに7000rpmのリミットまで、躾の行き届いた刺激をもたらす。

しかし、その魅力に身を任せてしまうのは危険だ。どのギア・ポジションであっても、あっという間に高い速度域に達する。

かといって、退屈とはほど遠い。