ブガッティ・シロン初試乗 1500ps、3億4,786万円の数字に媚びず、冷静に
公開 : 2017.03.27 11:50 更新 : 2017.05.29 19:00
乗り心地は分別あるもので、ハンドリングはかなりよそよそしい。走行モードはスタンダードなEBモードから、ハイウェイとハンドリングへ切り替えられるが、ここでは硬く、あそこでは快適に、といちいち選ばなければならないというのは、はっきり言って£2,518,000(3億4,786万円)のクルマにふさわしくないように思える。
快適性重視のEBモードでは、アダプティブ・ダンパーが減衰力を自動調整してくれるが、ほかのふたつは脚を硬め、車高を下げる。
しかし、どのモードであってもボディ・コントロールは良好で、乗り心地は硬めだが破綻することはまずない。とはいえ、それらはポルシェ911GT3とどっこいどっこいで、フェラーリ488GTBの不思議なまでの洗練度には及ばない。
ステアリングの重さはほどよく、セルフ・センタリングは正確だ。ただし、ハンドリング・モードでは不要な重さが感じられる。
直進性には安心感があり、ロック・トゥ・ロックは平凡。ダイレクト感やフィール、もしくは電動パワー・ステアリングのアシスト量は適切で、ゴルフRのそれ並みに良好だ。
パワーの供給が急激で、しばしばボディの広さを意識させられるクルマではあるが、今回の制限された速度域ではグリップもハンドリングも不足はなかった。
■「買い」か?
エットーレ・ブガッティは、無骨なベントレーを「速いトラック」と評したとか。
そんなEBに無礼を承知で言うのだが、450km/hに迫ろうとしながら、快適性も損なわず、内装はレザーやメタルで飾ろうとすれば、敏捷性やドライバーを熱中させるという点では妥協せざるを得ないのだと実感した。
それでも、むしろこのクルマには感心している。
シロンに強烈なエンジンを積み、その他の部分は適当に茶を濁せば簡単だっただろうが、それでは日産GT-Rを持ってきて、2000psにチューニングするのと大差ない。シロンはそれ以上のことを成し遂げている。
ヴェイロン・スーパースポーツをテストした際には、このクルマに明るくない面々が、乗っては320km/hの世界を体験し、スタート地点へ帰ってくるという繰り返しを楽に行えた。
シロンは同じルーティーンを問題なくこなすだろうが、到達速度はもう80km/hほど引き上げられるはずだ。さらに豪華さや快適さ、ハンドリングでも上回る。
シロン最大の成功は、この途轍もないことを当たり前に思わせてしまうことだ。ただのクルマ、とはいったものの、これがひとかどのクルマであることは間違いない。
ブガッティ・シロン
価格 | £2,518,000(3億4,786万円) |
最高速度 | 420km/h |
0-100km/h加速 | 2.5秒 |
燃費 | 4.4km/ℓ |
CO2排出量 | 516g/km |
乾燥重量 | 1995kg |
エンジン | W型16気筒7993ccクアッド・ターボ・ガソリン |
最高出力 | 1500ps/6700rpm |
最大トルク | 163.1kg-m/2000-6000rpm |
ギアボックス | 7速デュアル・クラッチ |